テキスト ボックス: もりのこぼれ話 ふむふむ
 

松っちゃんの ふむふむ
(2009-10年)のコーナーは こちら から。

むらじいの ふむふむ (2007-08年)のコーナーは こちら から。

 

 2011年からの
森のこぼれ話 ふむふむ は、リレー形式。
 毎回、いろんな活動をしているボランティアが交代で森の
 お話をします

<下の項目名をクリックすると 全文が読めるよ>



●実家の庭の木● (2023.4)

●PJ自然と遊ぼうの活動完了に当たって● (2023.2)

●横浜上空を渡る少数派の渡り鳥とは? (2022.12)

●マツボックリの持ち帰り《ヨセミテ国立公園で目にしたもの》 (2022.10)

●アサガオのバッタ (2022.8)

●航空機と渡り鳥の不思議 (2022.6)

●軍手・プラ手袋・皮手袋 (2022.4)

●焚き火の炎を見て想う (2022.2)

●「サッカーと鳥の意外な関係」 (2021.12)

●「おたまじゃくしまつり」 (2021.8)

●「あたし き・れ・い!?」 (2021.6)

●「森を育むアカネズミ」 (2021.4)

●畑のお客さん (2021.2)

●ヤマトクロスジヘビトンボ (2020.12)

●新型コロナ禍での読書 (2020.10)

(2020.8)

●スマホ・アコースティック・スピーカ (2020.6)

●(無題) (2020.4)

●煙の話 (2020.2)

●赤潮、青潮、そしてアオコ (2019.12)

●1本のミズキ (2019.10)

●今宵は月でも眺めてみようか (2019.8)

●ツノトンボ(角蜻蛉) (2019.6)

●そのアオジ、去年見たあのアオジではないですか? (2019.4)

●「いきもののにぎわいのための仕掛けは,こどもたちの遊び場所」 (2019.2)

●激減する(?)ノウサギ (2018.12)

●菜園をやっていると、動物がやってくる事がある。 (2018.10)

●夏はセミ (2018.8)

●カメムシに出会う (2018.6)

●三宅島一周ウォーキング (2018.4)

●私はジャケツイバラ (2018.2)

●伐木・・・ (2017.12)

●植物のカタカナ名前・・・ (2017.10)

●日本の夏の虫・・・ (2017.8)
●2100年 (2017.6)
●トリのナマエ (2017.4)
●アリの列(れつ)は、渋滞(じゅうたい)しない!? (2017.2)
●きれいな水って??? (2016.12)
●落ち葉の季節に、、、 (2016.10)
●30 周年で思い出した昔の話 (2016.8)
●梅雨と普通 (2016.6)
●アミノ酸、ハチドリ、松阪牛 (2016.4)
●テキサス ブラゾスベンド州立公園のボランティア (2015.12)
●場所はちがっても (2015.10)
●不思議な野菜、落花生 (2015.8)
●カタツムリ (2015.6)
●ある日のガイドウォーク「森の色を決める樹」 (2015.4)
●SF 映画と未來技術 (2015.2)
●歌の中の鳥たち (2014.12)
●自然と遊ぼう (2014.10)
●刃物の手入れ (2014.8)
●退屈な数字から見えてくるもの (2014.6)
●飲み水の話 (2014.4)
●本物のイルミネーションを楽しもう (2014.2)
●冬の森を歩こう (2013.12)
●森からの恵み (2013.10)
●陸を渡るオオミズナギドリ (2013.8)
●煙り好きは 変人?? (2013.6)
●このごろのトビ (2013.3)
●てのひらおんどけい (2013.2)
●ピクニック広場の下には・・・ (2012.12)
●炭とロケット (2012.10)
●森の広さを実感?できるおはなし (2012.8)
●金環日蝕 (2012.6)
●季節の森を歩こう (2012.4)
●手作り絵本 (2012.2)
●森に響く笑い声 (2011.12)
●友の会の畑 (2011.10)
●観察の森のトンボ (2011.8)
●続・倒れた樹はどうなる? (2011.6)
●梅にウグイス (2011.4)
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●実家の庭の木●
(2023年4月会報「ゴロスケ報々」より)


 定年になればいままでよりは自分の時間が多くとれるようになると思っていた。
しかし実際に定年となったら思っていたほど時間が取れない、というか、いやなんか全然時間が取れなくなってる気がする。
 仕事もなんか増えたが、問題は老々介護の坂道を下りかけてきていることがかなり大きい。

 そんなこんなで最近は実家に行くことが多い。私が中学生の頃に建った家なので築45年以上になる。建ったころは周り には何もなく、あるのは栗林、梅林、竹林、今では想像もできないような田舎のようなところであった。
 我が家にも縁側から出られる小さい庭があり、隣の梅林は自分の庭のようにして遊んでいた。 当時はアメリカシロヒトリという虫が出てきた頃で、梅雨頃になると梅にも真っ白な綿あめみたいな巣がたくさん作られる。 自分の土地の梅ではないがこれを燃やして退治するのが子供のころの仕事であった。

 今は縁側も無くなってしまい、遊んでいた梅林も全て住宅になってしまっている。
しかしその当時から変わらなかったのが、庭の隅に植えられている一本の柿の木であった。実が多く成るわけでもなく、 隣の家にはみ出している枝を切るのが面倒なだけの柿の木であった。
 唯一私の役に立っていたのはイラガの卵、釣りするときの餌にするととても良く釣れた。今だからだが、やたらと他にも 虫が付いていたように思う。手入れをするわけではないのでカイガラムシは多かったな、夏になればセミが早朝からやたらと うるさく鳴いていた。
 そんな柿の木も一昨年の大風で倒れそうになったので切ることになってしまった。一本木が無くなるだけで庭の風景がこんな に変わるのかと思った。
風景が変わるだけでなく、昼は家に入る陽が明るくなり、夜は隣の家の明りが眩しく思えた。

 実家への行き来が多くなったけど、そんなに”庭を見る”ことがなかったが、最近掃除をしたときにかなりびっくりしたこと があった。
 柿の木のあった場所、倒木更新なのか、単に庭を歩く人がいなくなった為だろうか、やたらと低い草が増え、いままで回り 込んで来なかったツタも伸びてきた。
あぁ、たぶんこのままこの家に住む人がいなくなったらこのツタが占領するんだろうなって勢いだ。
 あと、ちゃんと庭を手入れをしている方には怒られるだろうが、キイロテントウが多くなってきた。
たぶんどこか密生してるところにウドンコ病が発生してるんだろう。
探す時間がとれるといいが、早めに見つけて剪定しないと隣のおばちゃんに怒られる。

 近くでは外環道のジャンクション工事が終盤になってきている、完成すれば交通量も増えるだろう。 隣の大学もやたらと高い校舎を作り直しているし、大きなマンションの計画もでてきている。 この庭が庭であるのはあとどの位かわからないが、できるだけきちんと庭として手入れをしよう。

事務局 漆原 



●PJ自然と遊ぼうの活動完了に当たって●
(2023年2月会報「ゴロスケ報々」より)


 PJ自然と遊ぼうは開設1996年、以来足掛け26年とほぼ四半世紀になりました。
私はその翌年1997年からの参加です。今般、メンバーの高齢化で活動を継続することが体力的に困難となり、2022年度末を もって活動を完了することといたしましたので、ご挨拶と御礼を申し上げます。
 振り返ってみますと、発足当初は「ネイチャーゲーム」の手法が中心でしたが、回を重ねるうちにこの森の自然を素材に、遊びの 手法を取り入れたガイドウォークとして毎月第四土曜日の午後2回、子供を主体に親子の参加を受け、季節に合った自然の中での 遊びを自分たちも楽しみました。
 早春には「春の花を探そう」と小さな花を見つけて歩き、オタマジャクシの卵を見たり、捕まえようとすると素早く逃げるオタマ ジャクシを水の中で掌を広げて待つと、そっと集まってきて指先にチュッチュと吸いついてくるのを掬い上げてお腹の腸や心臓、 お口やお目目を観察して、やがて手を出し足を出すオタマと仲良しになります。夏にはトンボを見たり、セミの抜け殻を見つけ 何蝉の抜け殻か見分けたり、時にはニイニイゼミの冬虫夏草を見つけて盛り上がったり、バッタを素手で捕らえて、見分けシート で種類を見分け、最後には、みんなで飛び比べを楽しみます。
 バッタを捕まえて虫かごに入れようとすると、中にいるバッタは逃げようと、入れられる方のバッタは、こんなところに押し込め られてたまるかと暴れます。紙筒を上からそっと近づけると「やれ逃げ道」と思うのか進んで這入って行きけっして後戻りしません。 遠くまで飛ばそうと空高く放り上げると目をまわしてしまうのか、そのまま落ちてしまいますが、そっと掌を広げてやるとピョンと跳ねたり、羽根を広げて遠くまで飛んだりとさまざまです。
 草木のトゲトゲを見て手触りを感じ、何のためにトゲがあるのか考えたりします。 草木の匂いを嗅いで「この匂いは好きか、嫌いか」聞くとほぼ半数以上から「好き」と答えが返って来ます。例えば、あの「ヘクソ カズラ」では「おいしそうなにおい」とか「ドクダミ」でも「スッキリしていい香り」という人も。
 蜘蛛の巣にかかった虫を見て「可哀そう、食べられちゃう」とか「御馳走がとれて良かった」とか。 糸をそっとゆすって、蜘蛛が逃げ出すか飛びついてくるか、一緒にいる小さな蜘蛛はオスなのか、ピカピカ光っている小さいのは イソウロウ蜘蛛か、など。
 コゲラの巣穴を見て、頻繁に出入りしているときは子育ての邪魔をしないようそっと遠くから見て、子育てが終わった頃には「あの 穴に出入りできるのは10円玉くらいか500円玉くらいか」「どうしてあんなにまん丸に開けられるのか、コンパスでも持って いるのかな」とか、「ミズキ」の芽鱗痕を数えて自分の生まれた頃の木の姿を想像したりとか、遊びの種は尽きません。
 「自然に優しく接して、遊びの中から自然の素晴らしさと大切さを感じて、自然大好き人間に」一人でも多く増えてもらえるよう 心掛けました。小さなころから参加して大学生になってからも一緒に遊んでくれた冬馬君や、中学生になり「バス代が大人料金に なった」と誇らしげにしていた愛ちゃん、何回も遊びに来て、やがて中学生、高校生と大きくなって卒業していったリピーターの ご家族など、長い間一緒に遊んでくださってありがとうございました。そしてご指導、ご協力を頂きました観察センターレンジャー の皆様、友の会の皆様、本当にありがとうございました。これからも折に触れて森を訪れ自然保護活動に触れていきたいと思います。

 むらじい(村松 古明) 

 1996年10月“横浜自然観察の森”主催の第3回自然案内人講座の受講を修了しました。 一週間後にレンジャーに支えられ、三人の講座仲間と一般来園者を迎えて森の案内人デビューをしました。緊張と楽しみ、反省の 入り混じった時間でした。
 参加者の“ああ、面白かった”の言葉と笑顔に26年森に力をもらい、レンジャーの皆さんのアドバイス、村松さん、山本さん、 小泉さんとの出会いに充実した日々を過ごせたことを感謝しています。
“友の会”の発展を!

 新倉 房子 

 自然と遊ぼうPJの活動完了に際し、遠方の方から又、身近にてお世話なった方々からのメッセージを頂き、大変うれしく思っています。 1996年に「自然案内人講座」を受講後、修了者有志により立ち上げた「自然と遊ぼう」グループ活動の第一歩から、PJとしての 活動まで途中ブランクの期間があったものの、20余年の間大変お世話になりました。
 「自然案内人講座」で学んだ、来園者に対するアプローチの方法として、季節ごとに変わる森の色、音、手に伝わる感触等、森の中 でなければ感じられない空気感(佇まい)を問いかけ、プログラムへと誘導していくことなど、今でも印象深く脳裏に残っています。
 昨年12月にこの森を訪ねた時、石段を登り詰め、モンキチョウ広場に立って、ふと自然案内人講座で学んだアプローチを思い出し、 感無量の思いでした。 長い間お世話になりました、本当に有難うございました。

 山本 富一 

    



横浜上空を渡る少数派の渡り鳥とは?
(2022年12月会報「ゴロスケ報々」より)


 私はこの森に入って野鳥観察を始めてから15年になりますが、時に説明の付かない不思議に遭遇することがあります。野鳥 好きのあなたなら、ムナグロという名を聞いたことがあると思います。シベリヤやアラスカの沿岸部で繁殖し、地球を縦断 するような長距離の渡りで越冬地との間を旅するチドリ目の鳥です。日本でも渡りの途中の春と秋に旅鳥として観察する事 ができます。
 近年、カラーリングやデータロガーをムナグロに装着し、その移動経路を辿る研究が進展しています。その結果によれば、 ムナグロの多くはアラスカやその周辺で繁殖後、太平洋を直接南下し、南太平洋の島嶼で越冬、春には秋とは別ルートの日本 経由でアラスカ周辺へ戻ります。
 一方、少数は越冬の為、多数派とは異なるルートで秋に日本を通過、南部オーストラリアまで長躯渡り、そこで越冬後に春にも 日本を通過して北の繁殖地へ戻るとの事です。つまり、春に日本で観察されるムナグロは多数派と少数派、秋に観察される ムナグロは少数派のみという事になります。
 私は2013年9月に関谷奥見晴台でムナグロが群れで渡る姿を撮影できました。観察センターからムナグロはこの森での初記録、 と認定を頂きました。しばらく観察が途絶えていましたが、2018年8月末に至り、ウォッチング仲間の依田秀信氏がやはり関谷奥 見晴台でムナグロの撮影に成功しました。その翌年の2019年10月に再び私は関谷奥見晴台から遠方を横切るムナグロの群れを観察。 そして2022年9月に私として3回目のムナグロの群れを関屋奥見晴台で観察できたのです。この森での計4回の観察は全て8月から 10月の秋の渡り時期に当たります!どうやら この森で観察されるムナグロは秋に日本を通過する少数派であり、南部オーストラリア 目指して長い旅路についている群れである 、と言えそうです。

 不思議なのは、秋には少数派のムナグロを観察できているのに、全てのムナグロが日本を通過しているはずの春に横浜では一度 も確認できていない事です。関屋奥での観察は一年を通して実施しているにも関わらず、です。
 現在もこの理由を私なりに考え続けていますが、この奇妙な事例から野鳥観察のロマンと醍醐味を感じていますし、だからこそ 当面野鳥観察はやめられませんね。

 カワセミファンクラブ 大浦晴壽  



マツボックリの持ち帰り《ヨセミテ国立公園で目にしたもの》
(2022年10月会報「ゴロスケ報々」より)


 秋は観察素材が豊富。また季節の変化が早いので、観察会に参加される方にも案内役にとっても特に楽しい時期である。 その中でも存在感のあるのがドングリやこの森には少ないがマツボックリ。

 1999年5月、勤続休暇を使って単身サンフランシスコへ。目的はアメリカのヨセミテ国立公園のパークレンジャーの ガイドと子どもたちへの環境教育の見学や体験。その数年前から友の会でハンミョウの会の立ち上げに参加し、 インタープリテーションへの関心を高めていた時だった。多くのパークレンジャーたちの仕事を見て、話して、活動に参加して、 オフィスでレンジャーを支えるシステムも紹介してもらった。何よりも自己紹介で「ボランティアのインタープリター をやっている」と言うと、すぐに仲間に入れてもらえたし、、、おっと、このままでは紙面が無くなる(笑)。

 ヨセミテの景観を作っている代表的な樹木はオーク(ナラやカシの仲間)とパイン(マツの仲間)。つまりドングリと マツボックリ。しかもどちらも日本のものに比べると大きくて、何種かあるパインの中でもシュガーパインのマツボックリは 50センチ級のものもあるようで「落下に注意」と言われるはずである。
    
 日本でも子どもたちは喜んで拾って帰るが、ヨセミテでは大人にも
お土産として持って帰る人がいるようだ。とは言え、世界自然遺産で
毎年たくさんの来園者、となれば大目に見るわけにも、、、、、。
ヨセミテに入って五日目だったか、マリポサグローブ、別称「ジャイ
アントセコイアの森」を歩いていると、その何か所かで、僕の腰より
高い透明で大きな箱を目にした。そこにはこう書いてあった。

1) セコイアの種やマツボックリは動物の食べ物になります
2) やがて植物の栄養にもなります
3) それに、持ち帰りは法律で禁止されています

 箱の中には持ち帰られずに済んだマツボックリがたくさん。



 ちょうど横浜市では円海山周辺のマナーとルールの明確化と
啓発を進めようと、友の会を含む市民団体にも協力を求めている。
その動きには役所の固さが目につくが、せめてこんなユーモアと
実効性を兼ねた注意喚起の表示を円海山周辺に設置できたら、
楽しいだろうな。


 中塚(Charlie)森の案内人・ハンミョウの会  



アサガオのバッタ
(2022年8月会報「ゴロスケ報々」より)


 コロナでオンラインばかりなので森のネタがない。近くの森もナラがれで、えだがふってきてあぶないので林の中には入れない。 だからお庭のはなしで許してもらおう。緑のカーテンのアサガオ(@)に毎年6月ごろ、小さなバッタが、「1葉っぱ1バッタ」 ぐらいたくさんいる(A)。わが家では人気の、頭のとがった「ミニ」バッタ。もとから虫がにがてな家族も、 小さなころは平気だったのに大きくなったらいつのまにか虫がにがてになってしまった子どもたちも、 「こバッタ」とか言ってかわいがってくれる。せすじがシュッとのびて「しせい」がよいのがポイントらしい。 だから頭の丸いほかのバッタではいけないらしい。

     A   
          @                             イラスト:Mu

 夏休みに入ったころ、あんまり見かけなくなったのでさがすと、アサガオの葉っぱはあなだらけなのに、なかなか見つからない(B)。 とりに食べられたのかな。きっとなかまはへっているだろう。お庭をさがすと、草だらけの足もとからぴょんぴょんとび出す。 いたいた。ちょっと大きくなったけどまだまだ、まわりのコナラどんぐりのぼうしとくらべてもわかるとおり小さいバッタ(C)。 おくのほうのクヌギどんぐりの木が2回目の萌芽更新(ほうがこうしん)中だったりしてまるで山林のようにワイルド(あれほうだい) なお庭。落ち葉や草のたねやいろんな生きものをふやしてしまっているかもしれないので、きれいずきな人にはご近所めいわく かもしれないお庭(D)。

      
        B              C               D

 調べたら、バッタはアサガオを食いあらすがい虫としてたいじされているみたい。もしかしたら、ほかのお庭からもにげてきている のかも。かわいそうなので、わが家では、今年も草をぜんぶはぬかずにすこしのこしておこう。おやおや、あれほうだいをバッタの せいにしてはいけませんよ。 自分もふくめてズボラな家族のみんな。いそがしいからとか、暑いからとか言ってないで、 たまには半分ぐらい庭そうじをして、きせつのバッタに会いに行きましょう。

 (やまひょん)  



航空機と渡り鳥の不思議
(2022年6月会報「ゴロスケ報々」より)


 横浜市自然観察の森、友の会ZFC「雑木林フアンクラブ」大西と申します。
ビギナーながら「ゴロ報」通信の寄稿を拝命しましたこと深く感謝申し上げます。
私事43年間航空会社に勤務し、退職後早5年が過ぎ、69歳を迎えることとなりました。
当クラブに加入させていただき6年目を迎えることとなります。

 本題に入りますが、  @古くは航空機もヨーロッパ路線を飛行する際、アンカレッジ経由等、星を確認しながら飛行する「天測航法」という方法で飛行しておりました。乗務に際し操縦士と併せて航法士が乗務しており、星の位置を測定しながら飛行する方法です。ダグラスDC8の時代です。
 A次に、航空機をラジオと考えていただき最低2地点の無線局からの電波を受けて自分の位置を確認しながら飛行する「電波航法」という飛行方式で飛行しておりました。ボーイング727の時代です。
 Bこれは少し分かりにくいかもしれませんが、こまを回すとまっすぐに立とうとしながら回るジャイロという仕組みを利用し、操縦室にINSと呼ばれる3台の同じ機器を搭載し、近似値を取って飛行する仕組みを「慣性航法」と呼んでおり、ボーイング747の当初まで、この航法で飛行しておりました。
 Cいよいよ皆様馴染み深いGPSの登場です。人工衛星から電波を受け、北緯・南緯何度、東・西経何度、と航空機の目的地までの経路情報を連続して入力することにより、自動で辿って飛行することができます。自動車の自動運転装置をイメージしていただけたら理解しやすいと思います。現在はほぼ全てこの「GPS航法」で飛行しております。
 私も20代の頃、将来はこの飛行方式になると習いましたが、当時はなかなかイメージができませんでした。
 なぜ長々こんなとりとめのないことをお伝えしたかと申しますと、渡り鳥や魚は太古の昔から帰巣本能を有し、何千キロもの移動を繰り返し営んでおります。ロケットで宇宙旅行が可能になった時代ですが、生き物はおそらく物理的な理屈ではなく本能や香りで認知できているのでしょうか、どなたかご教授頂けましたら幸いです。
 とりとめのないことを書きましたが、改めまして今後共宜しくお願い申し上げます。
 ご拝読ありがとうございました。森ではおなじみ、草取りにも、ごみ拾いにも何かと便利な軍手。          

 大西 誠治  



軍手・プラ手袋・皮手袋
(2022年4月会報「ゴロスケ報々」より)


森ではおなじみ、草取りにも、ごみ拾いにも何かと便利な軍手。
畑の作業でも必需品、ありがたい存在だ。
もちろん洗って何度でも使える物だが、ある時洗うのが苦になった。
ライムギなどの穂のチクチクが刺さって取れないのだ。
思いついて、軍手の上からプラスチック製手袋をかぶせて使うことにした。
うん、快適だ。チクチクが刺さらないぞ。
軍手の洗濯はとても楽ちんになった。シンプルに個人的なよろこび。
でもプラ手袋は知らないうちに穴が開いて毎回捨てることになる。
医療介護の現場に関わっているから、プラ手袋も身近な存在だ。
1回使ったらすぐ捨てるのは衛生上当然のことで抵抗がなくなっている。
いや、でも、やはり、森の作業でこんなゴミを出してしまうのは如何なものか。
反省はするものの、チクチクと戦うのはイヤだ。。。。
と、去年あたりから、新たなアイテムが登場した。
畑プロジェクトで一人づつに皮手袋が与えられたのだ。
こんな便利なものがあったんだ、ふふふ、皮手袋。快適だ。
防寒にもなるし、チクチクもモノともせず安全、安心。
穴も開かず土も入り込まない。水分も少しなら浸みてこない平気。
厚くて洗うのが少し大変だけど。ちゃんと洗っているよ。
ところで、この皮手袋の皮は何だろう?
だれか・・・動物さん。ありがとう。
さらにところで、手袋は何て数えるのか?
ワンペアで数えるので、1双(いっそう)2双(にそう)だって。
でも軍手は左右がないので、1組、2組でもよいらしい。
そして、1打って書いて1ダースと読み=12双じゃなくて12枚らしい。
発注するとき、なにやら難しいだろうな。しないけど。         

 Mu  



焚き火の炎を見て想う
(2022年2月会報「ゴロスケ報々」より)


 寒い時期になると、雑木林ファンクラブではよく焚き火をします。炎を見ていると、心が落ち着くのは僕だけでは無いようで、最近はNHKでも 「魂のタキ火」という番組があるようですね。炎を見ていて、近頃、思い出すのは2017年から2019年に掛けて、友の会主催で行った「たたら製鉄」 のことです。一般来園者含め、30人以上が炭小屋に集まり、賑やかな「お祭り」となりました。今のコロナ禍の現状を思うと、信じられない光景 でした。

 そう言えば、皆さんと一緒に砂鉄を採集に行った「稲村ケ崎」の海岸も、海流の関係かどうかわかりませんが、砂浜がほとんど消えてしまった、 と聞いています。この地区における「”たたら”のふるさと」の象徴でもあった、あの黒い砂浜が無くなってしまうなんて、これも、コロナ禍と 同じく時代の大きな変節点なのでしょうか。感染症との闘いを歴史的に観ると、今後、ウイルスは猛威の棘(とげ)を削いでいき、ヒトとの共存 を図ることになるのでしょう。これは、植物とヒトが妥協し合いながら共存する、雑木林とヒトとの関係に似ているところもあるのかな?

 さて、コロナ禍は、知人と会えなくなったため、時間をたくさん作ってくれました。そのため、今まで気にはなっていたけど読めなかった世界 的に評判の高いSF小説「三体」を読むことが出来ました。この本の主題は、先ほどの「生物の共存」とは違い、「宇宙には共存は一切無い」という もので、それを理論物理学の最新の知見を環境としながら、この恐ろしいテーマを描いています。ここまで異なった見方があるのかと思いつつ、 コロナ禍の情報発信の現状とも比べながら、興味深く読んだ次第です。和訳で5巻もある大作ですが、興味のある人は一瞬で読めます。
 この本の中の(宇宙の)時間感覚とは、程遠いですが、僕らの森の保全活動も、永い時間経過の中で仕事をしています。草刈一つとってもその 成果は、2年後3年後にしか変化は出てこないように思います。地道に進めることが大事なのでしょう。でも、クヌギの林の花々は少し増え始めて いるように感じているのは、買いかぶり過ぎでしょうか。

 ・・・ホシクマinZFC 



「サッカーと鳥の意外な関係」
(2021年12月会報「ゴロスケ報々」より)


 皆さんはサッカーJリーグの各チームにマスコットキャラクターがいることをご存じでしょうか。Jリーグ(J1〜J3)の57チーム中、 54チームにマスコットがいて、そのマスコット達の中で、鳥のキャラクターが20チームと最多です!これは鳥業界としてチョッピリ 誇らしいことですし、サッカーも鳥も大好きな私にとっては最強のコラボってやつです。
 横浜市にはJリーグのチームが3つもあり、私が応援している横浜Fマリノスのマスコット「マリノス君」と「マリノスケ」も鳥で、 港町横浜に相応しいカモメです。私の故郷甲府市のチームのマスコットは犬。天然記念物の甲斐犬です。みんな地元密着ですね。 スポーツチームのマスコットだと、何となく熊とかライオンとか強そうな哺乳類系が多い気がしますよね。 いえいえ、鳥が最多!ちなみに哺乳類系は(たぶん)18チームです。(架空の動物とかもいて区分けが難しい)
 で、ここからが本題。その鳥のマスコットたちが、2019年8月に「Jリーグ鳥の会」という組織を発足しました。ベタなネーミングです し話題作りのネタかな?と思いきや、主な活動は環境保護活動といたって真面目です。発足後には高円宮妃久子様お立会いのもと、 国際的な環境組織の一つであるバードライフインターナショナル東京との共同活動宣言の調印を行いました。Jリーグのチームとして ではなく、マスコットキャラクターたちが「Jリーグ鳥の会」として、その姿のままで調印式にも出席しました。その後も、本業の サッカー普及活動の傍ら、それぞれの地域に根差した環境保護活動をしています。

 サッカーと鳥の意外な関係は他にもあります。昨年、J2の試合中、フィールド内に野鳥が迷い込んで何故か飛び立てなくなってしまい ました。主審は咄嗟の判断で足元のその野鳥を取り上げて保護しました。時には主審の判定を巡って殺気立つこともある真剣勝負の試合 中に、野鳥のためにボールから目をそらすことは主審としてとても勇気がいることだと思います。このファインプレーに「Jリーグ鳥 の会」会員たちは大感激し、その主審を名誉会員として承認しました。人間として初の会員誕生です。いい話ですねぇ〜

 残念ながら、コロナ禍で今はイベント開催が出来ませんので、「Jリーグ鳥の会」20名(羽?)の会員たちはSNSなどで愛鳥週間の 啓蒙活動や環境保護の発信や、地域の小学校訪問などを積極的に続けています。
 鳥の会のメンバーはみんな芸達者で人懐っこい性格の人気者です。子供たちにとっては、怖そうなお顔?の大人たちの話よりも、 愛嬌のあるマスコット達からのメッセージの方が説得力があるのかもしれませんね。

 サッカー界にも頼もしくて愉快な私たちの仲間がいたのです。共に自然環境保護に係る者同士、皆さんも「Jリーグ鳥の会」の挑戦 ならぬ鳥戦を応援してあげてください!

             鳥のくらし発見隊 今村 
マリノス君(右)とマリノスケ(左)             



「おたまじゃくしまつり」
(2021年8月会報「ゴロスケ報々」より)


 もみの木園から、明日まつりをします、とお誘いがありました。この幼稚園は園舎を持たず、普段は舞岡公園で過ごしているのですが、 年長と年中の大きな子たちは週に1度観察の森に来ています。まつりは、この大きな子たちが企画して準備もします。2歳から4歳まで の小さな人たちが、お客さん。今年のまつりは「おたまじゃくしまつり」と聞いていました。準備ができた次の日がまつりの日です。
 舞岡に行くと、広場の向こう側遠くにブルーシートが見えました。そこは「上郷の(彼らは観察の森を「上郷」と呼びます)ヘイケボ タルの湿地」なんだそうです。そして、「上郷は遠いからバスで行くんだよ」と、大きな子たちが段ボールで作ったバスに小さな子を 1人ずつ乗せて、「湿地」に運びます。「湿地」には段ボールで作った木道もあって、段ボールのおたまじゃくしたちが泳いでいました。 透明なぷちぷちの中に黒い丸が1つずつ描いてあって、それはカエルの卵だそうです。小さな子たちはおちゃまじゃくしをたくさん捕ま えたと、うれしそうに見せてくれました。
 今年、大きな子たちは毎週木道に腹這いになり、卵がカエルになるまでを見届け、おたまじゃくしが大好きになって、このまつりに 決まったそうです。

 実は今年の初め、ヘイケボタルの湿地の管理について、レンジャーさんを中心に友の会でカエルの卵の調査をしているみなさん始め、 以前ヘイケの湿地で調査や管理をしていた松田久司さん(友の会元事務局長)そしてこども行事担当の私もまぜていただいて、メールで あれこれ相談しました。野草の調査と保護PJの方、カエルやカルガモやアライグマの研究者たちや、近隣でカエルの保全をしている方 にもご相談しアドバイスをいただきました。
 ヘイケボタルの湿地のおたまじゃくしは一昨年、昨年と壊滅的な状況でした。卵はたくさん生まれるのですが、カルガモやアライグマ に食べられてしまったり卵の発生が進まずに死んでしまったり。ほとんどの卵が孵化まで育ちませんでした。実はここ10年で、おたま じゃくしが少ないために、3月の「はじめてのちいさなしぜんかんさつ会」でヘイケの湿地での観察を断念したことは何度もありました。
 とにかく今までと違う管理方法を試してみなければ。でも、大きく変えてしまって、うまくいっている産卵が減ってしまっては一大事 です。いろんな意見が出るので、掛下レンジャーは何度か計画図を描き直し、業者さんが作業に入る当日のぎりぎりまで計画を練り上げ てくださいました。

 結局、今年もたくさん産卵しましたが、一時期はほとんどの卵が無くなり心配しました。でも、網(買い物カゴが使われました)を 被せた卵が食べられずに育ち、その後の遅い産卵の頃には、泥上げしなかった場所や刈り残しの草の根から芽が出て餌や隠れ場所となり、 子どもたちが大好きになっておまつりしたくなるほど、たくさんのおたまじゃくしがカエルになりました。よかった♪

             [ふじた・かおる]  



「あたし き・れ・い!?」
(2021年6月会報「ゴロスケ報々」より)

 −オオキンケイギクさんとお話ししました− 2021年5月15日

オオキンケイギク:北米原産キク科の植物、環境省の特定外来生物に指定されています(オオ)
kiwi:篠原由紀子 横浜自然観察の森友の会会員(ki)

ki オオキンケイギクさんこんにちは、今年も横浜で咲き始めましたね。毎年増え続けて最近は秋になっても
  咲いていますよね。多年草のあなたは引き抜かないでいると毎年株が大きくなって、種も飛ばして、ご繁
  盛、ご繁盛。
オオ あたしは大輪の花で、華やかで美しいから、皆さん自宅の庭にも植えてくれるのよ。
ki 環境省があなたを特定外来生物に指定したのは河川の源流域に大群落をつくって稀少な在来植物が生きて
  いけなくなるからですが、確かに人の住まいの周辺では喜ばれているようで、注意喚起しても、「だって
  きれいじゃない」と言われます。
オオ あたしたちが増えたのが困るからって、あたしのせいじゃあありませんよ。道路の法面の緑化に利用した
  りポット苗として販売したりしたのはあなたたちなのですから。
ki 確かにそうですね。うかつなことに、私の住まいの周辺にオオキンケイギクがこんなに繁茂しているのに
  気づいたのは最近のことです。私の住む団地にも大量に花を咲かせていました。そのことに気づいていた
  住人は危惧していたようです。 遅まきながら、私は気づくなり除去作業に取り掛かりました。自分の住む
  団地でオオキンケイギクの引き抜きを始めて今年で3年目です。少なくなってはいますがまだあります
  よ。
オオ ご苦労様ですね。でも北海道にラベンダー畑をツァーで見に行ったりするし、一面の芝桜とかアジサイと
  か見に行くし、近場で黄色一色の景色を愛でることに、皆さんは違和感を覚えないのではないかしら。
ki 環境省も特別に保護すべき環境ではない住宅地ではどうしようもないと判断したのでしょうか、ホーム
  ページに「増えすぎを防ぐためには、梅雨時に刈り払いを行い、結実を防ぐことが必要である」と書いて
  あります。オオキンケイギクさんは根でどしどし増えるんですがねえ。 数年前に利根川の源流域に行った
  とき、河原にも周辺の住宅のプランターにもあなたがいるのでゾゾゾーーとしましたよ。 5月は大好きな
  月、住宅の庭から漂ってくるバラの香りにうっとりとしながら散歩していました。今では5月はオオキン
  ケイギクが咲く月、と身構えてしまいます。
オオ それはお気の毒様。
ki 今日はお話しできて良かったです、オオキンケイギクさん。 私達環境保全ボランティアのするべきこと
  は、横浜自然観察の森にオオキンケイギクが入ってこないように見張ること、瀬上の森には入ってき
  たらすぐに引き抜くこと、近隣住民に特定外来生物は自宅に持ち帰らないようお願いすること、であ
  ると決意しました。
オオ さよなら、kiwiさん、頑張ってね。

野草の調査と保護 篠原 




「森を育むアカネズミ」
(2021年4月会報「ゴロスケ報々」より)


 「定点カメラで動物調査」の活動では、2008年から観察の森の3か所に赤外線センサーカメラを設置し、動物の種類や数を調べています。 これまでに撮影された哺乳類の中で、タヌキ、タイワンリス、アライグマの次に多いのがネズミの仲間です。観察の森には、森林性の アカネズミとヒメネズミが生息していますが、これまで撮影されたネズミのうち、専門家によって同定されたのはすべてアカネズミ でした。両者は良く似ていますが、ヒメネズミは樹上生活が多く、定点カメラには写りにくいのかもしれません。

 アカネズミは頭から胴が8〜14cm、尾が7〜13cm、名前のとおり毛色は赤褐色でお腹は白く、クリっとした目とピンと立った耳が印象的 ですが、夜行性なので普段見かけることは難しいです。定点カメラで撮影されたネズミも全て日没後から夜明け前までに撮影されたもの でした。地中にトンネルを掘り、そこに巣を作って、地表に落ちた植物の種子や根茎(こんけい)、小型の昆虫などを食べて生活 しています。中でもどんぐりやクルミは大好きで、冬を過ごすため、せっせと貯蔵します(伊豆諸島ではヤブツバキの実を運んで 食べるとの報告あり)。
  貯蔵したものの一部はそのまま食べられずに残り、発芽することもあるでしょう。観察の森には、どんぐりのなるカシ類やヤブ ツバキがたくさんありますが、アカネズミが運んだ種子によるものも多いのかもしれません。

 アカネズミのもう一つの重要な役割は、フクロウやイタチなどの重要な食糧となっていることです。フクロウはネズミを主食としていて、一晩に15匹も捕ることがあるとのこと。

 森の中を歩くとき、森を育む大切な役割を担っているアカネズミのことも思い浮かべてみてはいかがでしょうか。

渡部克哉(定点カメラで動物調査) 


お立ち台に上がったアカネズミ


畑のお客さん
(2021年2月会報「ゴロスケ報々」より)

 冬の観察の森の畑に、モズが時々やって来て3年になる。ヒトを恐れない。近づいても年々逃げなくなった。その目的は、 ヒトが耕した地面から這い出す虫を食べることだ。枝から飛び降りては捕まえている。彼女(?)にとっては、 人間は餌を土から追い出してくれる召使のようなものかもしれないのに、近くにいるというだけで、畑の「準会員だ」などと 言っている。
 他にも、いろいろな動物がやってくる。
 一番良く目にするのは、コジュケイだ。畑に着いた時に、森に戻って行く姿をよく見る。畑の真ん中に、多くの足跡を残している こともある。食べ物もなさそうな畑に、何しに来ているのだろう。運動に来ているとも考えられない。ただ、いつも帰っていくのは 同じ方向である。
 そう言えば、ノウサギも何時も同じ方からやって来て、畑を横断している様だ。そして、時にライムギやマメ類の新芽を試食 するらしい。苗の上部がきれいかじり取られている。畑の縁に糞を残したりもする。これは畑の肥料だ。足跡だけを見ていると、 何時も飛び跳ねている様に思う。歩く事はないのだろうか。
 シジュウカラ、メジロ、ウグイス、スズメなどの小鳥も畑の林の枝までやってくる。昨年作ったと思えるメジロの巣が畑の クマノミズキに残っていた。小鳥が砂浴びをした跡も時々ある。種を蒔いた所でもお構いなしだが、被害が限定的だ。
 耕していると、モグラのトンネルに出くわす。夏場は水遣りに困る事もある。畝ではあまり見かけないが、周りの草むらには 沢山の大きなミミズがいる。畝にミミズが少ないのは、モグラが食べ尽くしているからだろうか。周囲の草むらは笹の根などで トンネルを掘るのが大変で、行かないのだろうか。それとも、こっそり餌場にしているのだろうか。
 アライグマも畑にやって来ていた。被害はひどかったが、捕獲活動のおかげで最近は少ない。埋まったままの小さなジャガイモ を掘り出す特技がある。土の中のジャガイモの在り処がどうしてわかるのだろうか。掘り出したジャガイモは食べない。 毒があるのが分かるのだろうか。
 他にもいろいろな動物が畑をすみかとしたり、通ったりする。以前はキジも畑に来ていたらしい。

 ところであのモズだが、あと何年来てくれるだろうか。世代交代で引き継いでくれる新しいモズは現れるのだろうか。 畑が生き物で賑わう事は嬉しい。いろいろな生き物がもっと来る畑にしたいものだ。

落合 

イラスト:Mu


ヤマトクロスジヘビトンボ
(2020年12月会報「ゴロスケ報々」より)

 ヤマトクロスジヘビトンボの幼虫に初めて出会ったのは2017年1月のキッパリと晴れた冬の日のことでした。 森の絵本づくりの会のメンバーといたち川の源流域の生きもの探しに行ったとき。もちろん、レンジャーの方の指導のもとです。
 その日の水温は11℃で、採取した生きものは9種類になり個体数は46ありました。冬の冷たい水の中に息づく多くの生きものに 出会って感動しました。その中でもヤマトクロスジヘビトンボの幼虫は印象深かったです。その姿は採取した水生昆虫のなかで一番 大きく、体は太く、色は黒っぽく足のようなものがたくさん付いているのですから。その姿から川ムカデとも言われています。 また、孫太郎虫とも言うと聞くと興味も湧いてくるのです。ヤマトクロスジヘビトンボがこの水域に住んでいるということは水質が きれいだということです。水の中でも地上の森のようにたくさんの命のつながりのなかで生活しているようです。
 ヘビトンボ類の幼虫は肉食性で一匹いると周囲から他の水生昆虫がいなくなるとも言われます。実際に採取した生きものを トレイに入れたときヤマトクロスジヘビトンボの幼虫は小さなヤゴを大顎でとらえ呑み込んでしまいました。大顎は強く、?み つかれると痛く、腫れます。土中で蛹になっていてもゴミムシ・ムカデ・クモなどの敵に狙われると大顎を使い攻撃します。 蝶などの蛹からは考えられないことで驚きました。
 攻撃する姿が蛇のカマをもたげる姿に似ているのでヘビトンボと言われているとも。成虫は夜行性なので飛ぶところをみることは 難しいようです。昼間偶然にも見た人によるとその姿は弱々しくトンボのようではなかったそうです。成虫が弱々しく飛ぶのはコナラの 樹液や水で生きているからなのでしょうか。それにしてもトンボでもないヘビでもない不思議な生きものです。
 冬の冷たい水の中のなかでひときわ大きく強そうなクロスジヘビトンボの幼虫の孫太郎虫が主人公の絵本がもうすぐ完成します。

森の絵本づくりの会 志釜じゅんこう  

 参考文献:林文男、1990b.ヤマトクロスジヘビトンボの生活史と分布、採集と飼育52


ヤマトクロスジヘビトンボの幼虫
イラスト:次田(森の絵本づくりの会)


新型コロナ禍での読書
(2020年10月会報「ゴロスケ報々」より)

 長い新型コロナ禍で雑木林ファンクラブも2020年2月から6月まで活動休止となり、退職の身では読書が増えた。主な本は昨年の直木賞受賞作“熱源”、 好きな作家しずいゆうすけの“犯人に告ぐ3”、浅田次郎の“シェエラザード”、“赤猫始末記”、“ウイルスの本当がわかる”、植物関連で“植物はすごい”、 “植物のひみつ”、物理学では“カミオカンデとニュートリノ”などなど。これから読書で感じた「ふむふむ」を挙げていきたい。
 ”熱源“は明治維新前後の樺太アイヌのヤヨマネフクを主人公にした物語である。維新前の樺太和親条約では日本とロシアの国境が不明で、後の1867年の 樺太雑居条約で日露雑居地とされ、この期間に彼は北海道に移住し、また樺太に帰っていった。北方領土とアイヌという問題を「ふむふむ」と理解した。 彼は成人後、白瀬中尉の南極探検に樺太犬を連れて参加もしている。アイヌという先住民族について新たな理解を持った。
 “犯人に告ぐ3”はオレオレ詐欺の犯人と神奈川県警との闘いである。この作家は神奈川県に住んでいるようで犯行地は横浜や鎌倉で、この辺が「ふむふむ」かなー。面白い。
 日本作家協会長の浅田次郎氏の小説は文章がうまくって面白い。”シェエラザード”は日本海軍が残した金塊を商業船でシンガポールに取りに行く話で、 今でも詐欺事件が起きるM資金詐欺の台本のような本である。
 “赤猫始末記”は江戸時代の牢屋の火事の物語で赤猫とは牢屋火事のことのようだ。“ウィルスの本当が分かる”は私の常識をひっくり返す本であった。 ウィルスは微生物ではないとか、結晶化するとか、抗生物質では殺せないとか、人や哺乳類の生殖は親と同じ子を産むウィルスのせいだとか。 抗生物質と哺乳類の生殖の原因については「ふむふむ」である。
 植物関連の本では人が日常的に接している梅、アブラナ、タンポポ、稲、アジサイ、ヒマワリ、ジャガイモ、菊、イチョウ、大根の秘密を知り驚いた。 例えば大根の太い部分は上の方は茎それ以下は根であるとか。
 物理方面は難しい。ノーベル賞を受賞した小柴さんや梶田さんがカミオカンデで実験しニュートリノの振動を発見してニュートリノに質量があることを証明した。 あと何年たったらこの発見が宇宙や物理学の未解決の「ふむふむ」を解決できるのだろうか?

吉田  


 
(2020年8月会報「ゴロスケ報々」より)

 今年は、家庭・仕事・学校などあらゆる場面において、ライフスタイルの変化を求められている。 半年前には聞き慣れなかったロックダウン・テレワーク・オーバシュートといった言葉が、ニュースから当たり前のように聞こえてくる。
 さて、自然界に目を向けてみよう。その一生の中で、私達には到底マネの出来ない劇的なライフスタイルの変化を遂げる生き物たちがいる。
 夏の人気者カブトムシやクワガタムシは、イモムシ型の幼虫から硬い甲を纏った成虫になる過程で、蛹というなんとも不思議な形態をとる。蛹の中では、殆どの組織がドロドロに溶けて成虫の体へと作り変えられるという。
 このように卵→幼虫→蛹→成虫と変化することを完全変態というが、さらに上をいく「過変態」というものがある。
 ツチハンミョウの仲間は、卵→6本足で動き回る幼虫→イモムシ型の幼虫→蛹のように動かない幼虫→イモムシ型の幼虫→蛹→成虫と、目まぐるしくそのライフスタイルを変化させるのだ。

 彼らに比べれば、私達の変化など大したことはない。一人一人がしっかりと対策をとり、感染拡大防止に努めよう。

ハンミョウの会 西山レヂヲ  


スマホ・アコースティック・スピーカ
(2020年6月会報「ゴロスケ報々」より)

 クラブ活動経費の一助を得るための「花と緑のスプリングフェア」用商品として、僕は数年前から 「スマホ用アコースティック・スピーカ」を制作している。オリジナルなモノを創作しているので、まぁ スマホ・アコースティック・スピーカ作家と言うことになるかな。
 今年は新型を開発した。鍋敷きにもなる優れもの。今までは、間伐材の風合いをできるだけ残した 材(例えば枝を玉切り<厚いボンレスハム状>にしただけ)を使い、主にiPhone用を制作していた。 しかし、iPhoneを含め昨今のスマホは激しく大型化して(ひとえに大容量バッテリーを搭載したい ためだが)、ボンレスハムの形状ではバランスが悪くなってしまった。また、音が出る部分が iPhoneと位置が異なるスマホも多いので、それにも対応できるようにした。加工度の高い板材の 使用を控えてきたが、モノによってはこのようにきれいな模様(これはサクラの板目材)を持ってい て、二つとない個性が表現できるのも楽しいので、今回は積極的に使うこととした。
 今作は板2枚を画像のように加工(残念ながら機械加工)して貼り合わせたシンプルの形状で、ス マホを左画像の後方スリットに挿しこむか(iPhoneなど下部小口にスピーカがあるタイプ)、音の出 る部分(背面スピーカ)をスリット上に合わせて置いて使用する。
 原理は簡単で、スマホから出た音がメガフォン状の部分を通過することで音が拡大される(蓄音機 と同じ原理)。裏面が開放されているが、通常は平らな面に置くのでメガフォン形状が構成される。 前部にスリットを2本切ってあるのは、拡大された音が真横だけでなく上方向へも出て、聞き取り 易くするためだ。外部からの電源等のエネルギーなしで、音が拡大されるのでエコなのである。 スプリングフェアはイベントのご多分に漏れずCOVID-19のお陰で中止になってしまい、未だに我 が手元にある。
 今回のCOVID-19禍は経済・文化活動だけでなく、様々なボランティア活動にも大きな影響を与え た。恐らく、これまで通りのボランティア活動の多くが、今まで通りの実施はかなり難しくなるものも 少なくないのではと思う(僕のやってるデイサービスでの傾聴ボラは密着当たり前)。
 人類(生き物も?)の営みは本当に細い綱の上に、たまたまバランスしていたものだと実感する。 今が最善だと奢らずにいることが本当に大切だ。

雑木林ファンクラブ 関根和彦  

       


(無題)
(2020年4月会報「ゴロスケ報々」より)

 今年2月の「初めてのバードウォッチング」で野外を歩いていると、参加者の方が頭上を見上げて
「あれって、何ですか?鳥の巣にしては小さいし」
樹上2mほどの枝先にぶら下がるように、お椀状の物があります。
「あれはメジロの巣ですね」
「エッ、鳥の巣ですか。ずいぶん小さいですね」
メジロの巣は外形が7〜8p、内径は5pぐらいで、深さは3pぐらい。ここに3〜5つの卵を産む。
主な材料は細かい枯草、糸状のビニール、コケ類をクモの糸などで絡めて作る。 産座(巣の底、卵を産むところ)にはシュロの繊維などを敷き詰めます。
「こんな小さい場所で、暮らしてるんですか?」
「いや、暮らしているわけではありません」

 鳥の巣というのは、いったいどんな役割があるのでしょうか。家? それとも寝室?
鳥の巣は家ではありません。つまり生活の場ではないということです。その目的は、繁殖のためです。
多くの鳥たちは、繁殖期の春になりつがいを形成します。そして巣作りをし、産卵します。 ヒナが誕生すると餌を運び、やがて巣立ち。ここで巣の役割は終わります。つまり我々の生活に当てはめて言うと 巣は「ベビーベッド」と言えるかもしれません。
また、巣をねぐらとして繁殖期以外にも利用する場合もありますが、多くの鳥たちは繁殖期以外は巣を持たずに、 葉陰や草むら、樹上や地上で眠ります。
「でもこんな道の真上で子育てしていると、天敵にすぐ見つかってしまうのでは」
いえいえ心配ありません。繁殖の時期には、葉が多く茂っていて、目につきにくくなっています。
「この巣はまた使うのですか」
多くの小鳥たちは、毎年新しい巣を作ります。巣を作る、というのは、繁殖行動の一つなんですね。 中には木に穴を掘ったり(キツツキの仲間など)、土に穴を掘ったり(カワセミの仲間など)、 木の洞を利用したりする鳥(シジュウカラ、フクロウ類)もいます。

 実は、今日見つけたメジロの巣には、もう一つお話しがあるんです。昨年9月の「みんなでバードウォッチング」 の時、この場所でメジロ2羽が甲高い声で鳴いていました。双眼鏡で見ると、アオダイショウが枝にからまっています。 そのそばにこのメジロの巣があり、中には3羽のヒナが。親の2羽が盛んにアオダイショウの周りで鳴き、 威嚇しています。しかし、親メジロの必死の抵抗も功を奏さず、3羽のヒナは呑み込まれてしまったようです。 その後枝から落ちたアオダイショウの周りを、なおも飛び回っていたメジロが印象的でした。 自然界の厳しさを目の当たりにした瞬間でした。

鳥のくらし発見隊 中里 




煙の話
(2020年2月会報「ゴロスケ報々」より)

 大学応用化学科2年生の息子が実験レポートで苦しんでいるのを見ながら、勉強ってやっぱり大変だな あと呑気に構えていると、関わっているいろんな団体の資料やら原稿作成やらが大量に滞っている自分に 気づいて少しやっては家事や仕事や雑事にかまけて、また忘れてしまって、思い出して慌てるということ を繰り返す。

 さて、化学の基礎は昔と大差はないようで、他の分野に比べて30年前の自分の知識や資料が役に立つ 割合も多く、少し安心する。ふと、昔時々ZFC通信などの原稿に書いたりした「炭焼きの科学」を思い 出す。

 冬は煙の季節だ。そう書くとなんとなく情緒もある。息子が小学生の頃、望年会に連れて行くと餅 米用の蒸籠(せいろ)や豚汁の煮炊き程度の些細な煙でも目に染みると言って過剰に避けていたのを思い 出す。無理もない、キャンプにでも行かない限り煙を浴びる経験は皆無の便利な生活環境である。 1970年生まれの自分でもまだ小学校の理科の教科書には木材の乾留(試験管に入れた木片を外から加 熱して炭にする)実験が掲載されていたが、ゆとり世代までには消滅、脱ゆとり・詰め込み回帰世代の息 子の教科書でも復活はしなかった(と息子は記憶している)。試験管がタールで汚れて使い物にならなく なるのも一因のようだ。

 しかし、煙が目に染みることぐらいは教えておいてもらいたいと思う。焚火もできなくなった都市部で は難しいかもしれないが、白い煙は主成分が水と酢酸、酢酸は木材成分の半分を占めるセルロースが由来、 などということをいくら教科書に書いても、体験無くしては、酢だから目に染みるのだという理解には程 遠い。まして火災時の新建材による黒い煙の怖さなど、伝わろうはずもない。放火事件などではさぞかし 怖い思いをしたことだろうと想像する。煙を知っている世代の何百倍も怖い思いをしただろう、大変なパ ニック状態になったであろうことは容易に想像がつく。

 いざという時のために、普通の煙で、対処方法を体得しておくことは、大事なことなのかもしれない。 観察の森には、情緒のある、比較的安全な煙が、炭やき小屋付近にある。煙の苦手な、若い世代や、子 どもたちにこそ、焼芋でもやりながら、煙が目に染みる体験をしてほしいと思う。

 「人類の科学知識量は9ヶ月で2倍に増え、1年で30%時代遅れになっていくらしい。つまり意識 してものすごいスピードで更新していかない限り、今の知識で5年後に使える知識は15%ぐらいしか ない。例えば、5年間勉強しない医者の診断が当たる確率は15%」という話をある講演で聞いた。 こうなると怠惰な自分などは新しい知識など覚えても仕方がない、勉強などやめてしまおうかと思って しまう。しかし、日常使える知識は、体験と共に身に付き、いざという時に威力を発揮する。人類の体 験量は、そう簡単には増えていかないと思う。自然環境との関係を体験できる場所や機会というのは、 ますます貴重なものだと、改めて思う。

 生き物の世界はもちろん、木質化学のような、身近な科学についても、観察の森には興味深い話題が たくさんあるが、紙面が尽きてしまったので、もっと面白い話は、またの機会にする。

※煙は高温の場合もあります。やけどには注意しましょう。また、一酸化炭素など無味無臭の有害成分 や、天然由来の有毒成分が含まれる場合があります。浴び過ぎには注意しましょう。

(やまひょん)

(※字が多くて、小学生が読めるような書き方でなくて、ごめんなさい。反省。)



赤潮、青潮、そしてアオコ
(2019年12月会報「ゴロスケ報々」より)

 前回このコーナーを私が担当した時、最後に「赤潮とか青潮って・・・」と書きました。今回はその辺 のところをとっかかりにしてお話しを始めたいと思います。さて、赤潮、青潮を教科書的に解説すれば、 以下のようになります。

赤潮
 プランクトン(渦鞭毛藻類等)が異常に増殖し、水の色が著しく変わる現象で、赤褐色、茶褐色などの 色を呈す状態です。
青潮
 大量発生したプランクトンの死骸などが沈降、底泥として堆積し、それが細菌類などによって無機物ま で分解される過程で酸素が消費され、貧酸素水塊が形成されます。貧酸素環境下では底質中の硫黄化合物 の還元が促進され、硫化水素の蓄積が進みます。このような水が風などによって表層まで湧き上がると、 含まれていた硫化水素が酸素と反応して硫黄のコロイド(極微細な粒子)が大量に生成し、青白く見える 現象です。

 以上のように、赤潮は大量発生した生物自体の色であるのに対し、青潮は硫黄化合物の色に由来します。 つまり、似たような言葉であってもその性質はだいぶ違います。どちらも主に海洋で起こるイメージが強 く、特に青潮は湖沼など淡水で問題になった例はないと思います。一方、赤潮は湖沼などで淡水赤潮が生 じますし、皆さんもアオコという言葉をお聞きになったことがあると思いますが、これは湖沼で植物プラ ンクトン(藍藻類等)が大量発生し水面に集まり青緑色の粉をまいたように見える状態です。赤潮もアオ コも見た目の色で違った言い方をするわけですが、基本的には単一もしくはごく少数の種の生物が大量発 生した状態のことです。よく、赤潮やアオコは背景としては窒素、リンの流入負荷量増加に伴う水域の富 栄養化が原因と言われますが、必ずしもそうではなく、淡水赤潮は富栄養化していない湖沼でも見られる ことがあります。
 これまで水環境における赤潮やアオコのような単一生物の大量発生は、富栄養化で説明され、水環境へ のリン、窒素の負荷を下げることに注力されてきました。しかし、それだけでは赤潮やアオコを制御でき ず、最近は地球温暖化による水温の上昇、競合するプランクトンの減少や捕食生物の消失(生物多様性の 減少とも言えるかもしれませんね。)などが複雑に関係しているという指摘がされています。そのため、水 生植物帯の再生による水辺環境の回復、外来種を含む特定の生物(主に魚ですが)の人為的な制御と いった取り組みを通じて生物多様性の回復、保全が図られ、赤潮やアオコ対策に一定の成果があることが確認 されています。何となく今自然観察の森で話題の中心となっている生物多様性に結び付きましたね。 めでたし、めでたし。あっそう言えば、赤潮やアオコの何が問題なのかのについて触れませんでしたね。
それは、またの機会に。

By Minoru Aoki
(友の会 理事)



1本のミズキ
(2019年10月会報「ゴロスケ報々」より)

 9月9日の未明に関東南部を通り過ぎた台風15号は、家屋や事業所や道路という生活の基盤を破壊し、ライフラインを寸断しました。被災した街と人々のくらしの早い復興を願うばかりです。

 私たちの活動する横浜自然観察の森でも多大な被害が報告されています。ガイドウォーク「季節の森を歩こう」の活動をしている「森の案内人・ハンミョウの会」にとっては、特にモンキチョウの広場のミズキが倒れたことは、長年のガイドの相棒を無くしたような大きなショックです。

 春には一斉に鮮やかな若葉が噴き出し、初夏には白い小さな花が雲のように広がり、秋には鳥が食べやすそうな黒い実が赤い花柄の上に色づき、その花柄は「森サンゴ」とも呼ばれます。冬が深まるにつれて上に向かって伸びる赤い枝ぶりはまるでトナカイの角のようです。もちろん樹そのものだけではなく、愛くるしいハートカメムシ(エサキモンキツノカメムシ)をはじめとする虫たちが食や繁殖の場として集まる姿も観察素材になります。

 もう一つこのミズキがとても使いやすかったのは、枝が手の届く高さで大きく広がっていたこと。例えば、春が近づく季節のガイドウォークで「神様、ごめんなさい」を言って、膨らんできた赤い冬芽を一つだけいただいて、芽鱗(がりん)という重ね着のコートを一枚づつはがすと、その中に何枚もの葉っぱの赤ちゃんとブロッコリーのようなつぼみがちゃんと準備されているのを見ることができました。
 そして芽吹きの後の枝には、落ちた芽鱗の痕(芽鱗痕:がりんこん)がナイフで切れ込みを入れたように残ります。それが、昨年はここまで、一昨年はここまで、という樹の成長をたどる証となり、特に子どもの参加者の年令と比べて楽しむこともできました。

 ただ一方で、ミズキはアカメガシワ、カンスザンショウ、ヌルデなどと同じく太陽の光が大好きな陽樹でパイオニア植物。森の遷移が進むと元気をなくして朽ちることになります。おそらくあのミズキも周りの樹が高く育ち、そろそろあの場所での役目を終えようとしていたのかもしれません。それに手が届くほど長く伸ばした枝は台風の強風に抗しきれなかったに違いありません。

 また今回の台風では円海山緑地の各地でも、多くの崩落、倒木、砂の流出などが発生しました。これはこの地域の地盤的な特徴も意識した里地里山としての管理が行き届かず、結果的に意図せざる遷移に任せざるを得なかったことに起因するものでしょう。保全管理計画への反映とそれを実際に進める行政や市民の体制がなければ、同じ災害を、再び、更に大きな規模で繰り返すことになりそうです。

 一本のミズキはこの森や生きもののことをいろいろ教えてくれましたが、倒れてもなお、これからの私たちの森での活動について、大事な示唆を残してくれているようです。

Charlie(中塚)
森の案内人・ハンミョウの会 



今宵は月でも眺めてみようか
(2019年8月会報「ゴロスケ報々」より)

 1969年7月21日、今からちょうど50年前、アポロ11号が人類で初めて月面に降り立ちました。着陸したのは、月でお餅をつくうさぎの顔の部分にあたる、 「静かの海」と呼ばれる場所です。
 当時小学生だった私も興味深くTVを見ていました。
 アポロ11号が着陸した近くには、小さなクレーターが3つ並んでいますが、このクレーターには月に降り立った3人の宇宙飛行士の名前が付けられています。
 月は、私たちにとってとても身近で、観察を楽しめる天体と言えます。
 楽しみ方をいくつか挙げてみると・・・
〇満ち欠けを楽しむ…月は約29.5日で新月→満月→新月と満ち欠けを繰り返します。夕方の西空に浮かぶ三日
 月、夜半の中空に輝く満月、夜が明けた空に浮かぶ有明の月等、様々な顔を見せてくれます。太陽の光が正
 面から当たっている満月と、横から当たっている半月では、双眼鏡やフィールドスコープで見ると半月の方
 が月の地形の影により立体的に見えます。
〇他の惑星との接近(ランデブー)を楽しむ…月に惑星が接近する現象は毎月のように起こります。接近する
 惑星や月との間隔、月齢はその時により変わりますが、季節の雰囲気なども合わせて楽しむことが出来ま
 す。
 今年はトンボ池が満水だったようですが、これからどんどん暑くなっていくのでたいへん気になります。

〇星食…月が星の正面を通過していくために起こる現象です。
 1等星などの明るい星が隠されるときは、観察のチャンスです。
〇月食…地球の影に月が入って隠される現象。みなさん一度は見たことがあるのでは?
 これらの現象は、天文年鑑やネットの天体関係の記事で調べることが出来ます。
 また観察も肉眼や双眼鏡、フィールドスコープなどで十分楽しむことができます。まずは自分の持っている
 道具を使ってどこまで楽しめるか試してみましょう。

 今年のお月見(中秋の名月)は9月13日です。月を愛でながら、50年前に人類が降り立った静かの海を眺めるのも一興ではありませんか。

秋元文雄 




ツノトンボ(角蜻蛉)
(2019年6月会報「ゴロスケ報々」より)

 今年はトンボ池が満水だったようですが、これからどんどん暑くなっていくのでたいへん気になります。

 あのあたりは、開けた草地でもあり、周辺は木々に囲まれていて、下のゲンジボタルの谷からの風が 吹き上がってきたり水没もするし乾いたりもする場所、なのでいろいろな種類のトンボをみることができます。そんなアキアカネの丘の下のように、ちょっと開けた草地なんかで見かけるのがツノトンボ。

 見た目、トンボみたいな透明な羽、でもちょっと身体に比べて羽が長い、しかもバタバタとチョウみたいな飛び方をしてすぐに止まる。 飛び方だけ見てると、羽化しそびれたウスバキトンボにも見える。 でも近くに寄ってみると体長と同じくらいのやたらと長い触覚が特徴的で、触覚の先端も線香花火みたいに膨らんでいる。

 名前はツノトンボですが、トンボの仲間ではありません。アミメカゲロウ目なのでウスバカゲロウの 仲間です。ヘビトンボの成虫もちょっと似ていますが、胴体の長さ、羽の大きさ、触覚が違います。 この時期ならもう産卵しているかもしれません。 細い枝の先端あたりに、とっても小さいトウモロコシのように見える卵が2列産み付けられています。 見方によっては花のツボミに見えるかもしれません。

 ツノトンボはウスバカゲロウの仲間なので幼虫もアリジゴクそのままです。しかし生まれてすぐは、 枝に一列にしがみついているアブラムシのように見えます。でもよく見ると大きな顎を持つアリジゴクが一列についている、ちょっと怖いかも!? そして次の日にはいなくなってる、一期一会、私も一回しか見たことがない。

 本州では普通に見られるようですが、同じ仲間のキバネツノトンボは神奈川県のレッドデータに載っていました。 今の時期、膝丈くらいの草地を歩くことがあって、ちょっと飛び立ったトンボがいたらよく見てください。 ほんとにトンボ?触覚が長かったらツノトンボですよ!

事務局 漆原 

 イラスト:大久保香苗




そのアオジ、去年見たあのアオジではないですか?
(2019年4月会報「ゴロスケ報々」より)

 この森で野鳥観察を続けている私ですが、今年の冬に、この森で冬を越す小鳥、アオジ3羽を個体識別して観察を続ける事ができました。 すると今まで思ってもいなかった事が見えてきたのです。今回はそうして判明した小鳥たちのお話です。
 最初のアオジは、付けていた足環の番号を2016年12月に判読できた個体です。判読した番号から、2016年10月に北海道で幼鳥と判定されて放鳥された事が判明しました。 この冬も足環の判読に成功し、これで3シーズン連続の確認になりました。今では目先も黒くなり、すっかり成鳥の姿です。 この森では半径100m位の範囲で毎年何回も観察しており、アオジが冬季に強い土地執着性を持つ事を私に教えてくれた個体です。
 自然豊かな北海道で生まれながら、遠く離れた大都会のこの森を選んで、毎年訪れてくれるなんて、なんて良い奴なんでしょうか。 来冬も是非戻って来てほしいものです。アオジは足環の回収記録から、最長8年2ヶ月生きた個体が記録されており、今年の冬でも4歳に満たない この個体が戻って来る可能性は十分にある、と期待しています。

 次のアオジは今年の冬に足環番号の判読に成功した個体です。やはり半径100m位の範囲を採食場にして動いている様です。 この個体は2016年2月にこの森で放鳥された幼鳥オスと判明しました。放鳥者の清水さんによれば放鳥の翌年にもこの森で再捕獲されている、との事ですので、 毎年この森で越冬している、と考えて間違いない様です。
 この個体は元気だったのですが、残念ながらその後、右脚が全く動かなくなっています。これに気付いた時は、間もなく落命し、もう再会は望めない、と落胆したのです。 ところが、右脚は動かないままですが、その後も仲間と一緒に何回も出現し、片脚ながら元気に採食を続けています。この分では来冬の再会は十分に期待できる、と考えを改めています。

 最後のアオジには足環は付いていません。この個体はこの冬に発見した時、後頭部が禿げていたのです。翌日にも同じ場所で発見でき、 同じ場所に後頭部が禿げた個体は2羽もいないだろう、と観察を続ける事にしました。羽毛の回復状況を追跡できる、と考えたからです。 このアオジはその後の観察経緯から、捕食生物の攻撃を受け、羽毛を失い、体が傷付きながらも辛くも虎口を逃れたもの、と推察しています。 発見から1ヶ月半後には禿げた部分はかなり羽毛に覆われて来ました。しかし、その後も羽毛が生えて来ない部分が残っており、 どうやら傷付いた部分には羽毛再生は望めない様です。この羽毛の少ない部分が目印となり、来冬この個体が同じ場所に戻ってくれば、再発見できるのではないか、と私は期待を膨らませています。
 野鳥一羽一羽を個体識別し、観察を継続すれば、それぞれの個体が持つドラマが見えてきます。そして小さな体に秘めた彼らの驚嘆すべき生命力も見えてきます。
 野鳥観察にこの森へ入ったあなた。そら、そこで採食しているそのアオジ。それはあなたが去年見た同じアオジかもしれませんよ!

(カワセミファンクラブ 大浦晴壽) 




「いきもののにぎわいのための仕掛けは,こどもたちの遊び場所」
(2019年2月会報「ゴロスケ報々」より)

 ヘンなところで子供たちに出会うことがあります。
 木が揺れているのでのぞきこむと、子供たちが何人も登っている。下の方の太い、しなる 枝に立っている子は、上の枝につかまりながら、飛び跳ねてびよんびよんしている。枯れた ススキのやぶがガサガサしているのでのぞくと、道ができている。たどっていくと、切った 枝が薮の中に積んであって、そこでまたびよんびよんしている。トランポリンだそうです。 パッチ状のススキのやぶは、「お家」。中に座っています。声をかけるときには、「ピンポーン」 って言わないと、聞こえないふりされます。もっと小さなススキのパッチは、犬小屋やネコ 小屋になることも。近づくと、ニャーニャー言いながら這い出てきます。太いツルは座って ブランコになり、つかまってなまけものごっこでも遊びます。チカラシバのやぶの中には、 寝転がっている子たち。最初はかくれんぼだったんだけど、外が見えなくて空だけ見えて気 持ちいいんだそうです(きっと種子の毛の先が服に刺さってなかなかとれなくて、チクチク しちゃうぞー)。

 多くのグループ、たくさんの子供たちが、同じ場所を使って、同じように遊んでいるのを 見かけます。大人たちは気づかないで通り過ぎてしまうような場所でも、子供たちには、遊 び場所に見えるんですね。「いきもののにぎわい」のために残したやぶやツル、枯れ枝、こん なことにも使われています。よしよし。

(ふじた・かおる) 


     ススキの刈り残しの中の子供たち   




激減する(?)ノウサギ
(2018年12月会報「ゴロスケ報々」より)

 ウサギ追いしかの山〜? かつて里山で身近な存在であったノウサギの数が全国的に激減 している可能性があるという。環境省の「モニタリングサイト1000里地調査報告書 生 物多様性指標レポート2017」によると、2006年以降の自動撮影カメラによるノウサギの撮影個体数は、全調査サイトを通して見ると、年間約1割のスピードで減少しているこ とが示唆されている(10年間で約1/3に減少)。
 日本自然保護協会によると、里山ではかつて定期的に間伐や植樹が行われてきたが、そうした伝統的管理が放棄されたことで草地的環境が減少、また若い木が少なくなったのがノウサギが減った大きな要因とみている。
 さて、ここ観察の森でもモニタリングサイト1000の調査の一環として、2008年より自動撮影カメラを林内の獣道3か所に設置し、動物の数、種類を調べている。ノウサギの 撮影個体数は2009〜2011年(撮影月数約6か月/年)ではそれぞれ67、33、28 匹であったが、2012年(撮影月数約4か月)では3匹、2013〜2018年(撮影月 数約3か月/年)ではそれぞれ11、5、11、4、2、8匹であり、減少傾向にはありそうだ。
 観察の森にはノギクの広場、アキアカネの丘、ピクニック広場などの草地があり、ピクニック広場(2015〜2017年に大規模工事実施)以外は、ここ10年で大きな変化があったようにも見えないが、何か環境が変わったのだろうか。また林内で若い木が減っているのだろうか。
 ノウサギの減少傾向の理由はすぐには分からないが、まずはノウサギの生態をもっと知るために、いま自動撮影カメラ10年分のデータの分析を行っている。季節によって撮影され る時間帯が異なっていることが分かってきたが、その理由は何か、食物の量や繁殖活動と関係するのか、また、それらの生活行動を脅かす何かがあるのだろうか。
 筆者は、10年程前、能見台付近の山道を歩いていた時に、 ばったりノウサギに出くわしたことがある。その時のノウサ ギが山道を一目散に逃げるスピードの速いこと速いこと、ま さに脱兎のごとくであった。そんな姿がまた見られることを 願って調査を続けている。

                          
                           自動撮影カメラで捉えたノウサギ

渡部克哉 
定点カメラで動物調査 
 


菜園をやっていると、動物がやってくる事がある。
(2018年10月会報「ゴロスケ報々」より)

春先のヒヨドリは、ブロッコリー、キャベツ、芽キャベツ、白菜といつもこの順に食べてゆ く。好みははっきりしている様だ。しかし人とは違って、ブロッコリーの頂花蕾は決して食 べない。ブロッコリーの葉には蕾よりも美味しい面があるに違いない。また、キヌサヤエン ドウのサヤに穴を開け、器用に実だけ食べる鳥がいる。なるほどキヌサヤエンドウは、ある 程度実が大きくなった方が美味しい。

二年目以降はあっという間に食べ尽くされるのに、初めて作る年の作物は動物の被害にあう ことは少ない様に思う。一年目は毒見だけにしているのだろうか、それとも気付かないのだ ろうか。初めて目にする食べ物は、用心するにこしたことはないと教えてくれているようだ。

春先の畑ではジョウビタキがまつわりつくことがある。静岡ではこの鳥に愛情をこめて、「バ カッチョ」と呼ぶそうだ。勿論鳥は馬鹿ではなく、耕作するすぐ傍で地面から出てくる虫を 狙っているのである。「もっと耕せ」、「もっと働け」、と催促されているようだが、また来た かと一緒に農作業をした気になって楽しい。

ある農家のおじいさんは市場に出せないエンドウを野生のノウサギに与えて仲良くしてい た。そのノウサギはその畑や周囲に害を及ぼしていないようだった。どんな風に躾ていたの だろうか。仲良く過ごす秘訣は何だったのだろう。

動物は我々にいろいろな事を教えてくれたり、楽しませてくれる。生き物と共存する畑を作 れれば楽しいだろうと思った。

落合 
 


夏はセミ
(2018年8月会報「ゴロスケ報々」より)

 セミは世界中に約1900種類、日本に約32種類が生息している。
 観察の森では、ニイニイゼミ・アブラゼミ・ヒグラシ・ミンミンゼミ・ツクツクボウシ・ クマゼミの6種類が観察できる。セミは鳴くとき、お腹が上下に動かす。小さいからだで大 きな声がでるのは、からだの半分くらいある腹の部分が空洞になっていて、共鳴するためで ある。早朝から鳴きだし、一日中鳴いている。力いっぱい鳴いている。
 日が暮れると森中響き渡るセミたちの鳴き声がピタッと止む時間帯がある。ピタッと止ん だのだ。一瞬、森がシーンとなったのである。そして静かに秋の虫たちが鳴き始めたのだ。 セミたちは明朝までの眠りに入ったのだ。

志釜じゅんこう



カメムシに出会う
(2018年6月会報「ゴロスケ報々」より)

 突然ですが、カメムシと聞いて、どんなことを思いますか?
 「せんたく物にくっつく丸いヤツ」「くさいから嫌い!」これよく聞きます。田畑や果樹園 で作物を作っている方にとっては「害虫」「天敵」でしょうか。
 一口にカメムシといってもその種類、大きさ、色、姿かたちは様々です。丸っこいの、長 細いの、平べったいの、ツルツル、トゲトゲ、角があるの、目の大きいの、口が太いの、な どなど。また卵で生まれて大人になるまで4~5 回脱皮をして脱皮のたびに違う模様・色・形 になっています。ややこしい虫ですね。
 観察の森にもたくさんの種類のカメムシがすんでいます。見つけるのも見分けるのもちょ っと難しいけれど、気が付くと葉っぱの上にチョコンといたりします。森で出会えたらラッ キーなカメムシを二つほど紹介。ひとつ目は、緑色にピンクの模様の入ったメタリックなや つ、森の宝石アカスジキンカメムシ。こんなのが身近にいるなんてってびっくりしますよ。 これの脱皮前は丸っこくって黒に白模様でパンダみたいです。ふたつ目は背中にハートマー クを付けたオシャレなやつ「ハートカメムシ」とも呼ばれるエサキモンキツノカメムシ。葉 っぱに産み付けられた卵をオスが隠すようにじっとして子供たちが出てくるまでずーっと守 り続けているんです。すごいですよね。
 カメムシといえば気になるのがニオイ問題ですが、胸にある臭腺から出るものでオナラで はありません。仲間との交信だったり、敵への警告だったりと目的があるのです。以前、あ る種1匹をフィルムケースに入れよく振って嗅いでみるという過激な実験を行い、そのニオ イを身をもって体験したことがあります。確かに例えようがなく超強烈でした。でも普通は 観察で触ったからといってやられたことはありません。森のメンバーにはチョコチップと間 違えて口に入れた「シビレ」経験の持ち主もいます。鳥なども同じことをして吐き出し二度 と食べない誓いを立てるんだと思います。
 つい先日森の散策中、葉っぱの上に例のパンダみたいなやつを1匹見つけました。通りか かった小学生の子たちに見せると「カワイイ〜〜」。やったー!先入観がないとカメムシもか わいいになるのです。とりあえず見に来てもらえばこのわくわく感が伝わると思うのですが、 もしよかったらセンターの図書コーナーにあるカメムシ図鑑を見てみてください。きっとカ メムシ観が変わりますよ。

Mu



三宅島一周ウォーキング
(2018年4月会報「ゴロスケ報々」より)

 私は日本の離島が好きでかつ歩くのも好きで、今回三宅島一周ウォーキングに妻とともに いってきました。伊豆7島のうち八丈島、神津島、伊豆大島はすでに行っております。
 三宅島は東京から南へ175q、面積55平方キロ、周囲38kmの火山島です。現在の 総人口は2900人で、2000年の噴火、そのあとの6年間に及ぶ島外避難の前の半分だ そうです。
 島は200種以上の野鳥で知られ、なかでもツグミ科のアカコッコが有名です。
 江戸時代は流人の島としても知られております。有名な絵島生島事件の歌舞伎役者生島新 五郎はここに流され、ここで一生を終えました。そのほか絵師のはなぶさ一蝶などです。

 金曜日の夜10時半、竹芝桟橋から橘丸で出航です。ツアーの総勢は30人。2人の若者 以外はたぶん65歳以上の熟年でした。自分も熟年ですが歩くためのツアーにこれほどの年 寄りがとはびっくりでした。
 島には定期船が発着可能な3港がありその日の風向き、波の状況によってどれかの港に発 着します。この日は伊が谷港に朝5時到着し、民宿で休み8時半から時計回りで北側の釜の 尻海岸から歩き始めました。その日は島の南側の阿古地区までの約20qを歩きました。島 は火山島で何回も大噴火があり溶岩が雄山から海岸に流れ落ちました。そのため流れ落ちた 先にあった村落が溶岩に埋まりました。その一つの椎取神社の鳥居は一番上の横木だけが地 上にあり火山のすさまじさを実感できました。
 溶岩で覆われた土地も緑が回復しており、まずヤシャブシというはんの木の仲間が生えて おりました。この木をパイロットツリーというそうです。
 江戸時代は年貢を塩で納めていたそうで、海水を煮る釜がつく地名が釜の尻海岸とか釜方 海岸とかがあります。
 一日の旅の終わりにアカコッコ館に立ち寄りました。以前観察の森でレーンジャーをして いた黒川マリアさんがここに勤務されておりお会いすることができました。館の観察窓の前 に泥田がありなんとそこに餌をとりに来たアカコッコがおり観察できました。胸から腹が赤 茶のとりでした。ラッキー。

 2日目は北側がら反時計回りで約8km歩き、全周の8割をあるいたことになります。

 青い空と海、雄大な雄山を堪能した歩き旅。きつかったけど楽しかった旅でした。

雑木林ファンクラブ 吉田



私はジャケツイバラ
(2018年2月会報「ゴロスケ報々」より)

 私はジャケツイバラ、つるだらけの観察の森で最も希少度の高いつるなのである。名前は イバラだがマメ科である。蛇のように絡みついたつるが棘だらけなのでそう呼ばれるのであ ろう。5月に手の届かない場所で華やかに黄色の花を咲かせているのを毎年眺めてくれてい ることと思う。近くで観察したい諸君、少し待ってくれたまえ、野草の調査と保護のメンバ ーたちが実生を畑の隅に移植して育てている。何年かすると咲けるようになるだろう。その 時は思う存分手にとって眺めてくれたまえ。おっと、くれぐれも棘に気をつけるように。
 「なぜ、ジャケツイバラは観察の森にたくさんあるのに、観察の森の外ではあまり見られ ないのだろうか?」と思っている君の感性に脱帽しよう。そんな君に観察の森に近い神戸橋 にあった見事なジャケツイバラの話をしようと思う。観察の森の外、いたち川のそばにあっ たこの株は誰かが守ってやらなければ河川改修の際に伐られてしまう恐れがあった。野草の 調査と保護のメンバーはいたち川を管理している栄土木事務所に出向いて、河川改修の際に は横浜市内で最も希少なジャケツイバラに気をつけて作業するようお願いしたのだ。それ以 後毎年5月に花を咲かせているのを見ては、今年も無事だったねと喜びあっていたのだ。と ころが昨年ネクスコの道路工事がその場所を直撃して、神戸橋のジャケツイバラは影も形も なくなってしまったのだ。行政と協力して守ろうとしたのに守れなかったんだ......。
 残された我々はせっせと花を咲かせ実をつけて、あちこちの隙を見つけては実生を発生さ せていくつもりだ。観察の森の中でなら、偶然良い環境に出会えば実生が育って、観察され、 記録されて、保護してもらえるかもしれない。
 もし、万が一、神戸橋のジャケツイバラが生き残っていたら、種は土の中にたくさん眠っ ているはずだから、発見した君は観察し記録し保護してほしい。その時、野草の調査と保護 の主要メンバーは夢幻の中にいても喜んでくれることと思う。 

聞き書き : 篠原由紀子

 



伐木
(2017年12月会報「ゴロスケ報々」より)

 雑木林ファンクラブは、森の保全管理の一環として伐木を行っています。先日、チェーン ソーの講習会に参加しましたところ、厚生労働省から「死亡事故撲滅に向けた緊急要請」が 関係事業者にでており、今年8月までの勤務中の死亡者数が対前年比49人の増加、休業4 日以上の死傷者数がなんと対前年比600人増加しているそうです。伐木のプロである林業 従事者の事故率は建設業や製造業など全産業と比較してなんと15倍になっているそうで、 毎年改善されていないそうです。昨年の林業の死亡事故は全41件、そのうち伐倒作業中が 25件も発生しており、その発生状況は「木の下敷き」や「木に挟まれた」とか「材が跳ね 上がって激突した」など悲惨な内容で、頻度や作業量は少ないが同様の作業をする者として、 改めて伐木が危険な作業であることを認識させられました。
 雑木林ファンクラブが受け持っている保全管理区域は、クヌギの林、炭小屋裏斜面林(管 理区域4区、9区)、トイレ前の林(管理区域7区)、ミズスマシの池上の林の4区域です。「横 浜自然観察の森保全管理計画」に則り保全管理の伐木を行っていますが、その内「トイレ前 の林」の例を紹介します。
 この林は遊歩道に沿って一段高くなっており、樹が一列に1m程の狭い間隔で密集して生 えているがなぜだ??自然ではありない!恐らく捕植のために苗木を植えて間引きせず成長 してしまったのではとのこと。この林は明らかに人工林であり、保全管理計画には「人工林 は徐々に自然植生に変えてゆく方向で検討する」となっていることから、レンジャーと協議 の上、下図の保全管理計画図の通り進めていきます。●印の遊歩道側に一列に生えているイ ヌシデ、ミズキ、オオシマザクラなどの40本は残し、その内側の×印のスダジイ、アベマ キ、トウネズミモチなどの72本は全て伐木し、下草刈りを定期的に行い自然の植生による 林への変化を目指します。
 ここは伐木作業を行う林の中で唯一遊歩道が近く、近場で伐木作業の見学が可能です。危 険な場合は通行止めにすることがありますが、伐倒方向が沿道にならない場合は通行止めに しませんので、来園の際,ぜひ我々の伐木作業の雄姿を見てください。

ZFC 谷垣勝彦  



植物のカタカナ名前・・・
(2017年10月会報「ゴロスケ報々」より)

「自然と遊ぼう」では森の中でいろいろ宝探しをする時、匂いのする草木を探してみ る時があります。

 良く見つけるものに「ヨモギ」「ドクダミ」「ヘクソカズラ」「クサギ」「コクサギ」「ク スノキ」などがありますが、名前を伏せたまま、その匂いが「好きか」「嫌いか」聞い てみると、意外に「好き」という答えが多く返ってきます。子供達は先入観なしに、大 人の方々は、案内するスタッフが「そんな悪いものを案内するはずがない」と忖度され るのでしょうかか。

 「ドクダミ」は「爽やかな」、「ヘクソカズラ」は「野菜サラダや枝豆のよう」などと 聞かされるのです。

 近頃は植物などの名前はカタカナで表すのが一般的ですが「屁糞蔓」と聞けば初めか ら悪臭を連想して嫌われてしまうようです。

 「クサギ」「コクサギ」も聞いただけで臭いものと思いこんでしまいそうです。

 「クサギ」はゴマやピーナッツのよう、「コクサギ」は柑橘類の香りなどと好評です。 カタカナ名前で損をしていそうなものに「イヌセンブリ」とか「イヌビワ」「イヌド クサ」とかが森で見かけますが「犬千振」「犬琵琶」「犬砥草」と書かれると大分印象が 違ってきます。

 「犬」が付くと「似て非なるもの」で本物より劣るものになりますが、決してそうと 決まったものではないことは実物をご覧になれば納得できることでしょう。

 ここ横浜自然観察の森にはありませんが「オオカメノキ・大亀の木」というガマズミ の仲間の木があります。

 以前私が教わった時には「オオバカメノキ・大葉亀の木」と教えられたように覚えて いましたが「大馬鹿めの木」と間違えられそうだからでしょうか最近の図鑑では「オオ カメノキ」としか見当たりません。

 「クズ」は「屑」か「葛」なのか、ヘイケボタルの湿地で見られる「アカバナ」は「赤 鼻」か「赤花」か、「クサレダマ」は「腐れ玉」か「草連玉」か、トンボ池に咲く「ホ シクサ」は「干し草」か「星草」なのか。

 「ママコノシリヌグイ・継子の尻拭い」なんて児童虐待の道具みたいな怖い名前など もあります。

 カタカナと漢字とでは大分印象が違ってきます。本来の名前の由来を調べてみるのも 楽しみの一つではありませんか。  

(村松)  



日本の夏の虫・・・
(2017年8月会報「ゴロスケ報々」より)

 日本の夏のムシといったら、やはりセミは外せないでしょう。

 暑い夏に大きな声を力強く響かせ、1週間の儚い命を懸命に生きるけなげなムシ。なんて思われていることもありますが、実は大きな間違い。

 夏に入る前・梅雨の頃から鳴き始めるニイニイゼミがいますし、落ち葉も増えてくる10月辺りまで鳴いているツクツクボウシもいます。決して夏だけのムシじゃないんですね。

 短いと思われている寿命についても、それは土から這い出てきた後の話。皆さんがよく目にする「脱け殻」になる前、地中での幼虫期間が数年もあります。アメリカには、 なんと17年も地中で暮らすセミまでいるようです。カブトムシもセミと同様夏に大人になりますが、冬を前に死んでしまいます。厳しい冬の寒さを越すことができるセミは、 ムシとしてはかなり長寿な種類になります。

 そんなセミ達ですが、最近ではヒートアイランド現象などによって数が減っている種もあるようです。 自然観察センターでは種ごとの初鳴きや遅鳴きの記録がされているので、それらのデータから横浜の環境の変化を考えてみる、 というのも森を守る活動につながるかもしれませんね。  

森の案内人ハンミョウの会・西山レヂヲ  



2100年
(2017年6月会報「ゴロスケ報々」より)

 ヒット曲「西暦2525年」(”In The Year 2525” Zager and Evans)にはまだ まだ遠いが、2100年について考えてみたい。
 21世紀最後の年。現在小学校1年生なら、生存している可能性が高い(博報堂 生活総研2100年の平均寿命。男性89歳、女性95.7歳)ので、他人事ではな い。
 1986年横浜自然観察の森が自然保護教育推進目的で設置された当時の横浜市 人口は3百万人で、自然破壊が更に進むだろうと想定され、実際に森を守る目的も あった。現在、当時以上にみどり豊かになり、多くの来園者がみどりに接して喜ん でいる。
 しかし、私が10年間ZFCで活動して感じるのは、そのみどりの力に圧倒され ていることだ。そして、私の住んでいる隣接する庄戸地区では、高齢住民にとって 庭の草木さえが脅威となり、それに抗しきれず転出を選択する方も少なくない。現 在の庄戸の世帯当たり居住者数は2.18人(横浜市2.23人。栄区2.37人)、高 齢化率51.4%(平均年齢は56.6歳)となり、すれ違う二人に一人は65歳以上 だ(2016年3月)。
 さて、2100年、今から83年後である。日本の人口は50百万人(5千万人) を切り(国立社会保障・人口問題研究所)、横浜市も2百万人を下回り1960年代 後半頃の状況になる(当時の庄戸周辺は農地と杣山だった)。高齢社会で高齢者も働 かざるを得なくなり、様々な点で効率性の高い駅周辺部に人口が集中することは止 まらないだろう(自動運転車も結局社会インフラになるので効率性が求められる)。 この状況は庄戸に限らず1970年以降に開発された駅から離れたエリアは同じよ うな立場だ。2100年はより高度に居住可能となるので、人口増加時に宅地化し たエリアに住む必然性は失われる。
 一度居住者数が減り始めると、その速さは加速度的に進み、一挙に過疎化し限界 集落となる。増えた空き家は放っておけば自然に打ち負かされる。その自然は地球 温暖化により、かつてのような穏やかなものではない(気象においては既に現実に)。 例えば竹の猛威だ。経済的価値が低い竹林拡大防止は優先が高い。増加する空き地 を整理し、農地化(工場制農地)や生産林化する等も視野に入れなければなるまい。 一度人の手の入ったみどりは、適切な人の関与がされなければ健全性を確保できな いので、長い視点での方針を考える必要がある。
 83年、樹の寿命からすれば決して長い時間ではないので、今の子供たち・その 子供たち・その子供たち・その子供たちのためにも、注意深くみどりと関わってい く心構えを持てる人を増やすために、観察の森に関わるボランティアが一人でも増 やせるように日々の活動の中で心がけなければ思う。

西暦2525年では間に合わない。
In the year 2525,
If man is still alive
If woman can survive,
they may find  

(ZFC 関根和彦)  



トリのナマエ
(2017年4月会報「ゴロスケ報々」より)

 鳥でも昆虫でも、植物でも、基本的に名前はカタカナで書くことになっています。もちろん 漢字の表記もありますが、常用漢字にはない難解な漢字であったり(読めますか?鷽、鵯)、 一つの種に複数のあらわしかた(ホトトギス=杜鵑、杜鵑、不如帰、時鳥)があったりと、混 乱を招くことになってしまいます。ただ、漢字で書いた方が特徴がよくわかることもあります。 たとえばホオジロ(頬白=ほおが白い)、カシラダカ(頭高=警戒している時などに頭の羽を立てることから。ホオジロの仲間で、決してタカの仲間ではありません)、ツツドリ(筒鳥= 竹の筒をたたいたような鳴き声)、エナガ(柄長=体の割に尾羽が長く、柄杓の柄に見立てて、 柄が長い)などなど。
 鳥の名前で多いのは、色を使った名前でしょうか。それだけ「色」は鳥の特徴を表している ものといえるでしょう。まずは白から。ハクセキレイ(白鶺鴒=鶺は背骨・背筋、鴒は澄んだ 冷たい水、つまり背骨がすっと伸びているの意か)、シロハラ(白腹=文字通り白い腹)、メジ ロ(目白=目のまわりが白い)、ホオジ ロ(頬白=頬が白い)。次に赤です。アカハラ(赤腹= 赤い腹)、アカゲラ(赤啄木鳥=腰が赤いキツツキ、ゲラはキツツキの総称の「ケラ」がなま ったもの)。続いて青。アオゲラ(青啄木鳥・緑啄木鳥=青い(緑)キツツキの意)、アオジ(青 鵐=鵐はシトドと読み、ホオジロ類の総称)。アオサギ(蒼鷺=「アオ」は青ではなく蒼。蒼 は「青白いさま」(蒼白)つまり青みがかった灰色のサギ)。アオバト(青鳩=緑色のハト)。
 毎月第2日曜日に開催している「みんなでバードウォッチング」の時、参加者の方から「ア オジやアオゲラは緑なのに、なぜ『アオ』なのですか?」という質問がよくあります。そうな んです「アオ・・・」と名付けられている鳥の多くは、青色でなく、緑色なんです。それには こういうわけがあります。「古代日本語では、固有の色名としては、アカ・クロ・シロ・アオ があるのみで・・・」(広辞苑)つまりミドリも青と表現されていたようです。その例として、 青菜・青葉・青田・青梅などの言葉が、今でも使われています。それでは青い鳥はというと、 瑠璃が 使われていることが多いようです。ルリビタキ(瑠璃鶲=「瑠璃」とは、仏典でいう七 宝の一つの宝石、その宝石の色の紫味のある青色のことを言うんだそうです)もう一種、オオ ルリ(大瑠璃)などがいます。その他にも黒ではクロジ(黒鵐)など。黄色ではキセキレイ(黄 鶺鴒)、キビタキ(黄鶲)など。中には複数の色名が入った名前もあります。その代表格はカ モの仲間のキンクロハジロ(金黒羽白)。金・黒・白となんと3色も入っています。
 このようにいろいろな名前の付けかたがあります。いろいろな生きものの名前の由来を調べ てみるのも、楽しそ うですね。
 ※文章に出てくる鳥は、すべて観察の森で観察されたことのある鳥です。
 ※名前の由来は、いろいろな説があります。 

鳥のくらし発見隊 中里幹久  



アリの列(れつ)は、渋滞(じゅうたい)しない!?
(2017年2月会報「ゴロスケ報々」より)

日本PTA 関東ブロック大会(茨城大会)の講演(東京大学先端科学技術センター 西成活 裕教授)から。先生は数ヶ月インドでアリの隊列を観察して渋滞しないことを確認したそうで す。渋滞学(例:20 台中1 台が車間を2 秒空けて緩衝車になると渋滞が解消し、全体として 皆が早く目的地に到着する)はTV などでも紹介され有名。他にもいろんな研究事例(例:バ ケツリレーではバケツに水を入れすぎると速度が遅くなるので一番早く水が運べるのは何割 入れたときか?とか、全員が早く避難できる非常口の位置は?とか、4 点間を互いに結ぶ最短 ルートは?とか、会社がつぶれない適正な仕事量は?とか)が紹介され面白かったのですが、 図がないと説明しにくいので省略。世の中、何がムダで何が最適なのか、わからなくなってし まいました。
国際ムダどり学会では、「目的・期間・立場の3 つを揃えないと、ムダか否かの議論はでき ない」と定義されているそうです。「世の中、ムダばかり」と言う人と、「ムダなものなど一つ もない」と言う人とでは、期間設定が異なることが多いらしいです。最適な結果を生むための 過程で考えられたムダは、ムダとは言わず、「科学的ゆとり」と言うそうです。アリは、渋滞 しないよう進化した(渋滞しないアリが生き残った)のでしょうか。人間も、われ先にと焦っ て渋滞を引き起こしている場合ではないですね(今はまだ、間に割り込まれてしまいますけ ど)。
さて、園内のアリは、本当に渋滞しないアリでしょうか。アリの列をみつけたら、よーく観 察してみましょうね。アリの他にも、「科学的ゆとり」を体得している生き物はたくさんいそ うですね。自然に学ぶことは、本当にいろいろありそうです。もしかしたら、人類の進歩に貢 献する、重要な発見が、すぐそこにあるかもしれませんよ。友の会の活動も、息の長い視点で、 「科学的ゆとり」を大切にしていきたいものです。 

(やまひょん)  



きれいな水って???
(2016年12月会報「ゴロスケ報々」より)

 前回、私が担当した時「飲み水の話」と題し、水道水のことを書きました。水道水は飲料水 を介した感染症を防ぐため、塩素による消毒をしていること、しかし、同時に塩素による消毒 はカルキ臭やトリハロメタン生成のリスクを抱えていることを書いたと思います。今回もそれ に引き続いて水道のことを書こうと思っていましたら、自然や観察の森に関係ある話でとの制 約ができましたので、ちょっと方向を変えてみます。当然覚えていないと思いますが、前回の 最後に河川や湖沼の汚濁について触れました。今回はその辺のことを書いてみます。
 ところで皆さんは「きれいな水」と言うとどのようなものを思い浮かべるでしょうか?飲む こともできる湧き水?イワナやヤマメが泳ぐ渓流の水?青く澄んだサンゴ礁の水・・・それぞ れにイメージがあるのではないでしょうか?でもこうしたイメージには、きれいな水が二通り あるように見えます。一つは、魚など多様多様な水生生物が生息可能な生物多様性を誇る水環 境を構成する水です。もう一つは、「水清ければ魚棲まず」のことわざにもある通り、皆さん が消毒しなくても飲んでお腹を壊さないような水です。こちらの水には、棲めるような水生生 物の種類は限られるため、生物多様性という観点からみると真逆のように見えます。しかし、 よく考えると雨が地下に浸透し地下水となり、それが湧き水となって地表に現れ川となり、周 囲の環境の影響受け栄養を蓄えながら生物相が豊かになりそして海へと注ぎ、海もまた陸から の恵みを受け豊かになる、さらに海の水は水蒸気となって・・・こうした水の循環と生物の営 みが調和した時きれいな水と人は感じるのかもしれませんね。
 一方で汚れた水というと下水なんかを連想されると思います。いわゆる水の汚濁の指標とし てBOD(生物化学的酸素要求量)とかCOD(化学的酸素要求量)といった言葉を、皆さん も見聞きしたことがあるかと思います。BOD やCOD が高い水というのは、有機物を多く含 んだ水のことで、まさに下水はこれにあたります。有機物が微生物によって分解される時、水 の中の酸素を消費します。つまり、有機物量が多いと多くの酸素が消費されるため、水中の酸 素を頼りとしている多くの水生生物は生きられなくなるというわけです。汚れた水で生物多様 性が低いのは、低酸素状態でも生きられる生物しか棲めないためです。でも、有機物やそれを 分解する微生物の存在が悪いというわけではありませんよ。有機物の分解物がまさに栄養であ り、多くの生物の生きる糧です。有機物も低すぎればまた、生物は棲めないのです。
 現在は下水道の普及も進み、有機物による汚濁は減り、多くの河川に生き物が戻ってきたと 言われています。でも赤潮とか青潮って・・・紙面がないのでまた別の機会に譲ります。横浜 自然観察の森でも湧き出した水が周囲の森によって豊な水環境を形成していく姿を観察でき ます。そんな観点から水を見直していただけたら幸いです。

By Minoru Aoki  



落ち葉の季節に、、、
(2016年10月会報「ゴロスケ報々」より)

 福地泡介という漫画家をご記憶だろうか。新聞の4コマ漫画などで活躍していた。30年ほど前、 本業で福地さんの悩みを解決することになった。それは、毎日毎日絞り出す膨大な漫画 のアイデアを既に作品にして公開したかどうか覚えきれない、すぐにわかるようにならない か、というものだった。その仕事の結末はともかく、私もどこかで同じような話をしているよ うに思いながら(笑)のこの寄稿だが。

 紅葉と落ち葉の季節が来ると、観察の森でのガイドウォークや各地の観察会で必ず試す持ち ネタのようなアクティビティ「落ち葉のグラデーション」。行事の参加者と歩きながら、一人 10枚くらい色合いの少しずつ違う落ち葉を拾ってもらう。そして、地面でもいいが、できれ ば風呂敷くらいの白っぽい布を用意して、まだ緑の残るものから、黄色、赤、茶色と色合いの 順番に見本を置いて、それぞれの色の近くやその間に拾った葉っぱを並べてもらう。最後に少 し離れた位置からみんなで見て、「これが今日の森の色です」となるわけだが、いつも楽しん でもらえる。

 これだけでも5分のアクティビティだが、時間の余裕によって、あるいは参加者の関心を見 ながら、話を広げていく。どうして秋になると葉が落ちるのか。どうして赤くなる葉と黄色く なる葉があるのか。落ち葉を土に戻す分解者の役割にも気づいてもらう。

 これも随分前だが、環境教育の勉強でスウェーデンに行った時、同じようなアクティビティ に出会った。そこでは落ち葉は一列でなく円のように丸く並べた。そして最後に真ん中に手で 揉みほぐした枯葉を置いて循環を表現。一本取られた感じがして、僕もその時の方法を活かす 時もある。

 ところで、このようなインタープリテーション(interpretation)につながる話を、先日の ある科学技術に関する国際会議で聞いた。「子どもたちはみんな科学者として生まれてくる」 という言葉。生物学に限らず物理でも化学でも、あれ何、これ何、どうしてなの、、、という好 奇心が科学の源泉だと。

 インタープリターとはあくまでも「通訳」。自然の中で、主役の生きものたちがありのまま に発しているメッセージを受けとめて、わかりやすい言葉と工夫でその本質を観客である人に 伝える能力。それには子どもたちの新鮮な感性にも応え、また鈍りかけた好奇心には再び火を つけるという役目もある。自分の持つ知識の説明者ではない。調査や管理作業の知識や技術と 同様に、インタープリテーションにも極めきれない高い世界があることが面白い。

 今年も11月初旬に「いつでもどこでも身近な自然の案内人講座」が「ハンミョウの会」に よって行われる。この横浜自然観察の森のフィールドでそんなインタープリテーションの魅力 に気づいてくれる参加者が、一人でも二人でもいてくれればと願っている。

中塚(Charlie)森の案内人・ハンミョウの会  



30 周年で思い出した昔の話
(2016年8月会報「ゴロスケ報々」より)

 観察の森が開園して30 周年、自然の時間の流れとすればほんのいっときでも、人 の時間の尺度から見ると一生の約4 割を占める長さですね。あと何回森に来ること が出来るだろうか。
 森ができて通い始めたころ、生き物を観察したり調べたりするための仕掛け(道具 や機材など)を作っていたことがありました。 例えば、
 ・観察センターのシジュウカラの巣箱に親鳥が運んでくる餌をビデオで記録しな がらテレビの画面に映して来園者が
  見える仕掛け
 ・カメラの前を生き物が横切ると自動でシャッターが切れる仕掛け
 ・50m ほどのケーブルの先にマイクをはんだ付けしてラジカセにつなぎ、遠くか ら音で観察する仕掛け
 ・巣箱の天井にCCD カメラの基盤を取り付け、離れた場所から中を見る仕掛け
 このようなものを半田ごて片手にセンターなどで作っていました。
 何かを観察したり調べたりするために仕掛けを作るのは、大変ではあるけれど楽 しいものでした。
 とは言え、最近は作る機会も減ってしまいました。あの頃と比べ、なかなか時間 が取れないということもありますが、わざわざ自分で作らなくても似たような機能 を持った製品が色々と市販され、流用できるようになったということが理由でしょ うか。
 本来の目的とは違う使い方だけれど、視点を変えれば生き物の観察などに使える というものは意外に多いのではないでしょうか。
 防犯カメラ(監視カメラ)などはそのよい例でしょう。元々は不審者対策用に市販さ れていますが、人が通ると熱を感じて写真やビデオを撮影し、暗闇でも赤外線を照 射して撮影可能というものです。
 実際、フクロウの巣箱のモニターに使ったところ、巣箱をのぞき込むアライグマ を捉えるという成果を上げました。
 この他にも生き物の観察や調査などに役立つものがたくさんあると思います。
みなさんもどんなものが役に立ちそうか、ぜひ考えてみてください。

あき  



梅雨と普通
(2016年6月会報「ゴロスケ報々」より)

 この記事がゴロ報に載るころは梅雨入りしているのかな?  子供のころは、梅雨時になると体中がジトジトするほど雨が続いたものだか、最近の梅雨はあっさりとしたものだ。
 それでも、雨の日は土日でも人が少なくてのんびり歩けるし、雨が降っていないと見つけにくい生き物もいるので、 雨は結構好きだ。
 地面をミミズが横切ってたり、大きな葉の裏で虫が雨宿りしてたり、このへんにいるかな?と葉の裏を覗くのも楽 しいし、ただ、ぼ〜っと尾根からモヤが上がっているのを見たり、水面に当たる雨を見てるだけもいい。
 みなさんは、梅雨で連想する生き物ってなんだろう?カエル、かたつむり、ナメクジ。 私は、梅雨−雨−アジサイ−かたつむり、だったんだけど横浜自然観察の森で遊ぶようになって、けっこう目に付くの はキセルガイです。
 ゴロ報の162号で、しかまさんが円海山域には25種類もの陸貝がいると書かれていますが、キセルガイも陸貝の仲間 です。
 見た目は名前のまんま、タバコを吸う為の煙管(キセル)に似てるからといわれてます。たしかに細長くてそっくり です。
 樹のウロや、ちょっと朽ちている場所、地面の腐葉土の下など、湿っているところによくいるので、雨でなくても見 つけることはできますが雨の日の方がたくさん出歩いているように思います。
 普段は、樹木などに垂れ下がっているようにしているだけですが、雨の日は長い殻を引きずるように動く姿を見ること ができ、盛んになにかを食べているように見えます。
 また、最近縁あって福島へ遊びに行くことが多く、お土産屋さんで「カンニャボ」なる健康食品をみたことがあるが 最初はそれがなんなのか知らなかったが、原材料はなんとキセルガイ。
 昔から肝臓によくきく民間薬として飲まれていたそうだ。(森のキセルガイは取っちゃだめだよ)
 横浜と福島、場所が違うから住んでいる生き物も当然ちがう。
 横浜でごく普通に見られる生き物が、福島ではすごく珍しかったり、その反対もあったり。
 いつもそばにいて普通に見ている「普通の生き物」、それは普通じゃないかも知れない。 生き物だけじゃなく梅雨もそうだ。梅雨が無くなったら...
 横浜自然観察の森でも、「昔は普通にいたのにね」なんていう言葉がでてくる時が来るかもしれないけど、できるだけ 普通にいてほしい。  

事務局 漆原  



アミノ酸、ハチドリ、松阪牛
(2016年4月会報「ゴロスケ報々」より)

 私は現役時、世界一のアミノ酸メーカーに勤務しておりました。今回は生き物を考える際に、 体を形成しているタンパク質の構成要素であるアミノ酸に着目するのも面白いですよ、というお話です。
 例えば、水だけで我々は何日生きられるでしょうか。普通は約一ヶ月。条件が良ければ70日以上でしょうか。皮下脂肪が潤沢な方 ならカロリー収支上は100日は生きられますが、たいていはそれ以下の日数で死んでしまいます。脂肪がまだ体内に残っているのに 死ぬのはアミノ酸不足が一因との説があります。
 体の細胞は、機能低下をきたしたり、寿命を迎えると自ら死にます。(アポトーシス作用と言います)死んだ細胞は分解されその アミノ酸等が小胞を形成し、新たに形成される細胞でそれらは再利用されます。しかし100%再利用されるのではなく、一部は尿で 排出されてしまいます。従って、新たに形成する細胞の必要量から不足するアミノ酸は食物から供給しなければならず、供給が無け れば新たな細胞を形成できず、いずれ私たちは生命を維持できなくなるのです。私達の体は一年前の自分ではありません。 毎日アポトーシスで多くの細胞が死に、新たな細胞が新たな材料(食料からのアミノ酸など)で形成され、一見同じ自分として続いて いるのです。
 さて、チョウやセミの成虫はアミノ酸に乏しい花蜜や樹液を飲んでいます。彼らは変態後に休眠する種を除けば極めて短命で、 かわいそう、と感じる方も多いと思います。しかし、アミノ酸の供給が無ければ長寿を実現できないのは道理でしょう。
 そこで質問です。ハチドリとは体重僅か5〜6gの種が多い、主食が花蜜である事で有名なアメリカ大陸産の小鳥ですが、 寿命は驚異の17年という記録があります。短命なチョウと同様に、アミノ酸に乏しい花蜜食と言われているにも関わらず、 何故長命なのでしょうか?
 答えは簡単です。ハチドリがホバリングしながら長い嘴で花蜜を吸うテレビ映像に惑わされないで下さい。彼らは花蜜を吸います が、同時に花蜜に寄ってくる昆虫類、クモなどもかなりの量を食べているのです!もう一度言います。タンパク質つまりアミノ酸の 摂取は生命維持に必須なものです。
 ではもう一つ問題です。低タンパク質である事が明白な植物を主食にしている草食動物はどの様にタンパク質を得て、体を形成、 維持しているのでしょうか?
 大量に食べる!というのも一部の種では正解です。その他、体外や体内のバクテリアを利用してタンパク合成をしている種など、 正解は何通りかあります。(木の実には一部高タンパクの物もあります。)しかし、考えてみて下さい。植物体にはそもそもタンパク 質構成要素のアミノ酸に必須な元素である窒素が乏しく、草食動物は自ら体内でタンパク質を合成したくとも、その材料(窒素)に 常時窮しているのです。それでは、牛など反芻動物はこの原料(窒素)不足をどう解決しているのでしょうか。
 タンパク質が体内で代謝された老廃物は尿素です。尿素には窒素が含まれています。窒素の少ない植物を食べている反芻動物に とって窒素は貴重です。そこで本来は尿として体外に排泄されるべき尿素の一部を、“もったいない”とばかりに唾液や反芻胃に リサイクルする!と言うのが反芻動物の出した結論です。反芻胃の中でバクテリアにリサイクル尿素を窒素源にアミノ酸、タンパク質 を合成させ、バクテリアごと消化吸収して体を作っているのです。
 つまり我々人間は、牛の体内でリサイクルされた彼らの尿を原料に形成された牛肉を、「うまい!さすが松阪牛だ!!」と舌鼓を 打って食べているのです。  

KFC 大浦晴壽  



テキサス ブラゾスベンド州立公園のボランティア
(2015年12月会報「ゴロスケ報々」より)

 2011年から約3年間、仕事の都合で米国テキサス州南部の大都市ヒューストンで暮らしました。 米国に行ってすぐ、横浜自然観察の森のような、どこか落ち着けるところ、活動できるところはないかとあちこち探してたどり着いたのが、 ヒューストンから南西方向に車で50分のところにあるブラゾスベンド州立公園です。
 テキサス州最長(2060km!)のブラゾス川に面し、三日月湖(川が流れた跡)、人工湖、湿地、巨大なカシやニレの森が広がる 面積約2000haの広大な公園です。水辺、野の鳥あわせて300種以上、シカ、ウサギ、リス、アルマジロ、カワウソ、アライグマ、 ボブキャットなどなど動物にとっての楽園ですが、有名なのはなんといってもワニ(アリゲーター)で、300頭ほどが生息しています。 オーストラリアなどに生息するクロコダイルと比べると、少しおとなしいようですが、大きなものは5m以上にもなり、近づいたり餌を 与えたりは厳禁です。
 公園では、数十人のボランティアのレンジャーが大きな役割を担っていて、毎週末にはレンジャーによる様々なプログラムが用意 されています。湖の周りを1.5時間ほど歩くガイドツアー、バードウォッチングツアー、ネイチャーセンターでは公園内の生きものに ついての30分講座やワニの赤ちゃんふれあいタイム、望遠鏡を持ったレンジャーが湖の決まった場所、時間にやってきての解説、 などがあります。どれも少人数を相手にレンジャー一人で対応するというシンプルなものでしたが、和気あいあいと楽しいものでした。 これら定期的なもの以外の様々なイベント、公園内の見回りと声掛け、各種調査、外来植物除去、入場ゲート対応(公園は有料)、 キャンプサイト対応(馬連れの人のためのサイトもあり)、ギフトショップ(ボランティア活動の収入源)、飲料水タンク交換、トレイル 整備などを行っています。
 さて、ワニは普段は水辺でただ日光浴しているか、ゆっくり泳いでいることが多いですが、春にはオスがメスを呼ぶために野太い声 で吠えたり(恐竜もこんな声で吠えていたかも)、秋には赤ちゃんが親の頭に乗ったり降りたり、冬には大きなカメをくわえてガシガシと 甲羅をかみ砕こうとする姿や、たまにトレイルをのしのし歩くのも見られました。トレイルにでーんと居座ったときは、レンジャーがやって きてずっと見守りつつ話をしてくれたりしました。
 行けば何かしら発見のあるこの公園で、もしもレンジャーになれたら、などと考えてみたものの、いろいろとハードルは高く、気軽に という訳にはいかず断念。ここで行われている活動に深く関わることはできなかったけれども、プログラムに参加したり、道行く人と一緒に 観察したり、日本からの出張者を案内してバードウォッチングの楽しさを知ってもらったり、BBQしたりととても楽しめました。
 この公園は、北はカナダ、南は中南米まで移動する渡り鳥、旅鳥にとって非常に重要な場所になっていますが、テキサス州の湿地は 年々減少し乾燥化が進んでいます。公園のまわりは19世紀初頭からの入植で、どんどん牧場、綿花畑に変わっていきました。楽園のような この公園がいつまでも続くこと、野生動物と環境の保護に関心を持つ人が増えることを願ってやみません。

定点カメラで動物調査 渡部  



場所は違っても
(2015年10月会報「ゴロスケ報々」より)

1.「伊勢神宮の森」
 脳科学者の言う神宮の森へ行くと他と比較できないユニークなクオリアが間違いなく感じられるとの言葉に引かれ、私の内側にどのようなクオリアが感じられるか、期待と不安で初めて神宮に足を踏み入れた。
 巨木の間から立ち上がる空気・光・木の香りに、すっぽりと包まれた時の他の場所とは違った体感は、長い長い年月、森を畏れ、まつり、大切に守り支えてきた人々の営みと、それを包む自然の営み(神宿る森)が、私に実際に向き合うことでしか出会えないクオリアを感じさせてくれた。
 およそ宗教とは無縁の日常を過ごしているが、西行法師が詠んだ「何事のおわしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる」に共鳴!

2.「カスタニアンの樹」マロニエ(セイヨウトチノキ)・ナチスドイツ強制収容所(チェコ)
 若い女性は近いうちに、自分が死ぬことを悟っていた。それにもかかわらず、V.E.フランクル(「夜と霧」の作者)が彼女と話をしたとき、じつに晴れやかな表情をしていた。
 最後の日々に彼女は内面的にどんどん深めていったのだ。バラックの小さな窓から「カスタニアンの樹」の緑の枝が見えた。
 「あの樹が一人ぼっちのわたしのただ一人のお友達なんです。あの樹とよく話をするんです。」
 「あの樹はあなたに何か返事をしましたか?」
 「樹はこういうんです。わたしはここにいる――――わたしはここにいる――――わたしはここにいるよ、永遠の命だ――――」
 私の思いや言葉なんて必要ないですね。

3.「落ち葉プール」
 私達「自然と遊ぼう」のメンバーも、子供も大人も大好きな「落ち葉プール」。
 その落ち葉を提供してくれる観察の森の多くの子供たちが中心になり、大きな竹ぼうきと、子供曰く“巨大なちりとり”で荷車へ落ち葉を積みこむ作業に、自分がやると張り切っている子供達は、見事な落ち葉の山を作り、 潜ったり、気持ちよさそうに寝転んだり、お父さんに落ち葉プールへ飛び込ませてもらったり、空へ向かって吹雪のように飛ばしたり、子供達の歓声と笑顔は大人達も引き込みます。アイドル並みのカメラの列、嬉しそうな大笑いは “森に吸い込まれ”木々の栄養に勝手に思っています。
 余談・幼稚園生のA君
 「これから近くの落ち葉プールへ行って、パンツ一枚になって泳ぐのよ」の私の声掛けに素早く反応し、寒風の下、ジャンパーを脱ぎ、セーターを脱ぎにかかり……。お母さんと私は大慌て、A君はニッコリでした。

自然と遊ぼう 新倉 房子  



不思議な野菜、落花生
(2015年8月会報「ゴロスケ報々」より)

 友の会の畑では、夏に落花生の黄色いかわいい花が咲く。 この落花生の実は土の中だけで熟すのは、ご存じの通りである。でもこの地中に種をあらかじめ蒔いてしまうという生殖方法は、 子孫を広く分布させるのに効率が悪いように思える。一つは、生育範囲を広げにくいことである。 種を埋めることのできるのは元の位置からせいぜい1、2メートルの範囲だろうから、特別の事でもない限り百年で200メートルも広がらない。 しかも、途中に川や山があったら越えるのは難しい。おまけに種は油が多すぎてすぐ腐る。地中では何年も持ちそうにない。 もう一つは、せっかく一つの莢の中に種を数個作るのに、莢ごと土の中にいると、一つの莢から一つの芽しか成長できず、 残りの種は無駄死にとなってしまうことだ。莢が硬くて、生育初期に生育の良い豆が悪いものを押しつぶしてしまうためらしい。 圧死である。種を作るのに多量のエネルギーを使うにしては効率が悪すぎる。友の会の畑でも、 採り残した莢から2株以上の苗ができているのを見たことがないから、このことは確かだろう。 何故こんなへんてこりんな植物が世界中に広まることができたのだろう。それには人間との共生が大きな手助けとなったと思えるが、それだけであろうか。
 落花生の原産地は南アメリカだ。今の栽培種は野生種の交配種だということは分かっているが、その親の野生種はまだ特定には至っていないらしい。 栽培されていた落花生は人の手で先ずアフリカに渡り、その後北アメリカやヨーロッパに渡った。そして今では世界中で栽培されている。 日本は明治初期から栽培が始まったらしいが、現在では生産性が悪いことから、最盛期より生産量は減っている。
 それにしても、どんな風に落花生は進化してきたのだろうか。落花生が人間に出会うまでにどんな手段で遺伝子を引き継いできたのだろう。 じっと自生地を守っていただけなのだろうか。人間以外にも落花生の繁栄を助ける何者かがいるのだろうか。それともこの変てこな方式に変異したとたん、 すぐに栽培しようとする人間に出会うという幸運があったのだろうか。ただ想像しても、漠として南アメリカの霧の中をさまようようだ。

参照:落花生 前田和美 法政大学出版局 2011

畑プロジェクト 落合道夫  



カタツムリ
(2015年6月会報「ゴロスケ報々」より)

 梅雨に入ると雨のしずくが木々の枝や草花、シダやコケ類に降りそそいで森はしっとりとした色と匂いに満ち溢れています。
 生きものたちにとっては恵みの雨ですね。
 ふだんは木の根元や倒木のうらや落ち葉の中にいるカタツムリが葉の上を這いまわる姿を見るのもこの時期でしょうか。
 観察の森のある円海山域には殻の大きさが1・5mmのミジンヤマタニシから5pほどのヒダリマキマイマイ、殻の形が丸みの強いビロウドマイマイや細長いキセルガイなど25種類以上の陸貝がいます。ナメクジも仲間です。
 殻の巻き方には右巻きと左巻きがあり、殻の尖った方からみて、時計まわりが右巻きで反対が左まきです。森やあなたの家の近くで出会ったカタツムリは何巻でしょう?またいろいろな種類をウオッチングするのも楽しそうです。
 参考文献 森のちいさなおとしもの

森の絵本づくりの会 しかま 



ある日のガイドウォーク「森の色を決める樹」
(2015年4月会報「ゴロスケ報々」より)

 ここから尾根を見てみましょうか。いい天気ですね。もし今日の森を絵に描くとしたら、どんな色の絵の具がいるでしょうね。(茶、灰色、緑、青とかの声)そうですね。他にどうでしょう、、、。少しピンクっぽく見えませんか。(そう言えば、とうなづく顔と目)実はこの森には、森の色を決める樹というのがあります。この季節はその樹の枝先がどんどん赤くなるので、この森も春が近づくと赤くなるんです。  それではちょっと移動して、森の色を決める樹を近くで見てみましょう。(十数メートル移動する)

 これが森の色を決める樹です。ほら、枝先が真っ赤でしょ。トナカイの樹とも言います。枝先がぜんぶトナカイの角のように上に伸びていますよね。枝先にもっと赤い丸いものがついています。何でしょう。(つぼみとか芽とかの声)そうですね。冬芽って言います。この中には、何が入っているんでしょう。(花とか葉っぱとかの声)何が入っているか、どうすればわかりますか。(ちょっと困った表情も、、、)この芽をむいてみればわかりますね(笑)。この森は採集は禁止されていますが、行事で観察する時、たくさんある丈夫なものを少しだけあちこちからもらうのは許してもらっています。そうそう、もらう時には必ず「神様、ごめんなさい」って言うのもルールです。

  (みんなで)「神様、ごめんなさい」さあ、むいてみましょう。たくさん重ね着をしていますね。何枚あるんだろう。あれ何か見えました。(参加者の)手のひらにのせますよ。(葉っぱだ、の声)そうですね。小さな葉っぱの赤ちゃんが何枚も出てきました。きれいに光ってきれいですね。あれ、葉っぱを全部とったら、何か丸いものが残っています。(みんなのぞきこむ)これはブロッコリーです。わかりましたね、八百屋さんにあるブロッコリーはこの樹からできるんですよ。(まさか、と顔を見合わせる表情)ハハハ、この森のガイドはよく嘘を言いますから気をつけてくださいね(笑)。これは花の赤ちゃんです。

 今、この冬芽が赤いのはこれから成長する葉や花の細胞を害のある紫外線から守るためだと言われています。5月の連休の頃になると小さな白い花がたくさん集まって、これくらいの(両手で大きさを見せながら)かたまりになります。それが森のあちこちで咲くので森にたくさんの白い雲が浮かんでいるように見えます。花が終わると新緑。そして夏に向けて緑が濃くなり、秋には葉が黄色くあるいは赤くなり、やがて葉っぱを全部散らして、しばらく灰色の森に戻りますが、また春が近づくと、、。

 エッ、この樹の名前ですか。このガイドウォークは不親切で最初に名前を教えないんです(笑)。あなたなら、森の色を決める樹にどんな名前をつけますか。(一呼吸置いて、、、)図鑑の名前は、ミズキ、って言いますけどね。

 さて、次は水辺で春を待つ生きものをさがしてみましょう。 

Charlie(中塚隆雄)森の案内人・ハンミョウの会 



SF 映画と未來技術
(2015年2月会報「ゴロスケ報々」より)

 私はサイエンスフィクションとその映画の愛好者である。年代順に私が見た映画とその当時の未來技術を述べてみたい。

1 海底2万マイル : ジュール・ベルヌ原作で、映画化は1950年代であった。斬新なデザインの潜水艦で、ネモ船長が発明した小型原子炉で潜水したまま2万マイルを航海できる。映像も美しかったが、何よりその当時まだ実用化されてなかった原子力を予言した小説、映画であった。その後、アメリカ海軍で最初に就航した原子力潜水艦に、小説と同じ“ノーチラス”という名がつけられた。(ふむふむ)

2 2001年宇宙の旅 : 原作はアーサー・C・クラーク。映画化は1968年。この映画はSF映画の金字塔である。1960年代から三十数年後の2001年、人類は月面に基地を持ち活動している。(2014年現在まだであるが)その月面に非常に強い磁気特異点が発見され、発掘すると、超合金でサイズが黄金比であるモノリスが見つかり、そこから木星に向け強力な電波が発信される。それは、人類のサルからの進化を数百万年前に手助けした宇宙の誰かに人類はついに月面にたっしたというシグナル電波であった。そこで調査のため 木星への宇宙旅行となる。
 宇宙船にはIBM製作のハルという人間の知能を持つcomputerが搭載され、木星までの船の操縦・冷凍睡眠の管理をする。これが誤動作を起こし乗組員を次々に殺していく。生き残った船長が木星に到達したモノリス(これは異次元へのGATE WAYであった)の中に突入し、異次元の世界にいく。
 サルからの進化は宇宙の誰かによってなされた!人間の知能をもつComputer!惑星間旅行!人工冬眠!異次元への旅!と1968年当時ではまさに画期的な映画であった。

3 エイリアン(Alien) : 1979年から始まった宇宙怪獣映画シリーズである。ある惑星に不時着した宇宙船の乗組員に宇宙生物が寄生し、体内で成長しついには宿主を突き破って生まれる。この生物(エイリアン)は非常に強力で乗組員は次々に殺される。生き残った女性航海士リプリーと生物の女王との壮絶なバトルが見どころである。第2作目は地球のある兵器会社がこの生物を捕獲するため再航海する。1作目でエイリアンに勝ち 冷凍睡眠で地球に帰還したリプリーがその目的を知らされずMissionに同行する。第2作目では人間とそっくりのアンドロイドが乗組員の1人となり、リプリーをたすける。アンドロイドにも感情があるのかと思わせる場面がある。日本には鉄腕アトムやドラえもんがいるが、将来このような人工知能が出現するのであろうか。
 この映画が世界的にヒットしたあと、成田空港の外国人用ゲートの表示が “Alien”から“Foreigner”にかわった。
 外国人旅行者から我々はエイリアンかと苦情が来たからという。(ふむふむ)

 その後 スターウォーズ、Independence Day、 最近はZero Gravity,、Inter Stellaなど多くの映画をみたが、紙面の都合上この辺で終わります。

ZFC 吉田賢一 



歌の中の鳥たち
(2014年12月会報「ゴロスケ報々」より)

 いろいろな歌の中にも。鳥たちが登場します。そんな歌を検証してみたいと思います。
 まず1曲目。
 「カラスなぜ鳴くの カラスは山に かわいい七つの子があるからよ・・・」 童謡「七つの子」(1912年 野口雨情 作詞)おなじみの童謡です。さて問題はこの「七つの子」です。「七つ」とはいったい何を指しているんでしょうか。考えられる一つ目は、「子ども(雛)が七羽いる」という意味。が、しかしカラス(ハシブトガラスもハシボソガラスも)は一度に産む卵の数は3〜5個。7個という例はないようです。ですから、七羽の雛はちょっとおかしい。では「7歳の子ども」では? しかしカラスの7歳はりっぱな大人(成鳥)。むしろ高齢のカラスです。では、「七つの子」とは?

 では2曲目です。
 「夕焼け空がまっかか トンビがくるりと輪をかいた ホーイのホイ・・・」(1958年 三橋美智也 歌 「夕焼けトンビ」)えっ古いって。そうなんです、私も母に聞かされた歌です。
 トンビとはトビの俗称です。もしかするとトンビの方が、おなじみかもしれません。
 トビが飛んでいるのを見たことがありますか。ほとんど羽ばたきをしないで飛んでいます。この気流を利用した飛び方を、ソアリング(帆翔=はんしょう)といいます。トビがまさにくるりと輪をかくように飛んでいるのは、上昇気流の縁にそって飛び、高度を上げているからなのです。まさに省エネ飛行ですね。

 最後の曲は
 「季節にそむいた冬のツバメよ 吹雪に打たれりゃ寒かろうに ヒュルリ ヒュルリララ・・・」(1983年 森昌子 歌 「越冬ツバメ」)
 ツバメは夏鳥です。関東地方では3月〜4月に渡ってきて繁殖し、9月〜10月には越冬地の東南アジアやオーストラリアへ渡っていきます。歌詞は吹雪の中を飛んでいるツバメ。いやー北国の寒さが伝わってきますよね。しかし、しかしです。ツバメの中には確かに越冬するものもいるんだそうですが、その記録のほとんどが関東地方以南。つまり冬でも温暖な地方のようなのです。そうすると、吹雪の中を飛ぶツバメって・・・?

中里 



自然と遊ぼう
(2014年10月会報「ゴロスケ報々」より)

 日本自然保護協会機関誌『自然保護9・10月号』が先日郵送されてきました。 本誌「読者の広場 Nature Navi」欄には、予定通り、我々の「自然と遊ぼう」の活動を知らせる案内記事(9月:初秋のバッタ飛びくらべ、10月:秋の自然と遊ぼう)が依頼原稿通り掲載されていました。 我々の案内の後続記事は、「2014年度いつでも、どこでも身近な自然案内人講座 2日コース」、「横浜自然観察の森友の会」と記された、講習会への募集記事でした。

 「自然と遊ぼう」は5名が登録ですが、実動は4名という小さなグループです。 グループメンバーは3・.4期生で構成されています。 自然案内人の講習会は、小生が受講当時は4回連続受講可能な人という条件で、講師は日本自然保護協会の安江京子さんという自然観察指導員の方でした。 応募後レンジャーから言い渡されたことは「講座はあくまでも初級のしかも入り口で、講座終了後引き続きグループで自習を週末に連続4回してほしい」という条件を今永正文レンジャーさんから告げられました。 その条件で毎週土曜日に約十数名が自習しました。 「自然と遊ぼう」が発足当時のセンター長は市職員の方でした。 チーフ・レンジャーは大屋さんでした。

 受講生の中に千葉県から通っていた人がいました。 JR洋光台駅から運賃の関係で約90分を歩いて来ていたとのこと。 勿論講座終了後の自習の期間も休まず参加していました。
 余談ですが、後年千葉県で自然保護指導員の講習会の際、その講師の中に「横浜観察の森」自然案内人講座で受講した人が居たとのことの様でした。

 今年の8月17日「森を守るボランティア体験」は、大人11名、中学生1名、子供11名(その中には3・4歳と推定できる子が複数人)という多勢の方々が集合しました。 参加者顔ぶれを見て、無理かなと見ていましたが、一応予定の線でという事で、村松さんが「セミの抜け殻探しは子供さん達とは別行動」と説明をしたところ、大人たちから動揺が起きました。 急遽スタッフ・メンバーで打合せし、親子同一行動としましたが、子持ちで参加された方達にはボランティア活動は念頭になく、夏休みを子供と一緒に「セミの抜け殻探し」と、安易に申し込んだと思います。 プログラムが終了後、事前に伝えてあった『ゴロスケ報々』の発送の手伝いをお願いすると、一組の親子を除いて全員帰りました・・・。

小泉 



刃物の手入れ
(2014年8月会報「ゴロスケ報々」より)

 森の管理には刃物が欠かせません。 鋸・鉈・鎌・鍬・鋤など。日々の手入れをしっかりしてやれば、安全に効率よく作業ができます。 手入れをしていない刃物は疲れるし危険です。
 横浜自然観察の森がある円海山近郊緑地特別保全地区周辺に鍛冶ヶ谷という地名があります。 鍛冶職人がいたことに由来しているようです。 鍛冶、古くは冶金師つまり鉄などの金属を作る職人も指していました。 鍛冶ヶ谷に近いよこはま栄高校敷地内に「深田製鉄遺跡」と呼ばれる奈良時代の製鉄遺構があります(残念ながら埋められ見られません)。 ここでは、鍛冶が砂鉄から鋼(はがね)を作っていたようです。 鎌倉周辺の砂浜が砂鉄を多く含み色が黒いのは川からの砂鉄の供給があるからですが、鍛冶ヶ谷周辺も一つの供給源で土の中に砂鉄が多いと推測されます。
 砂鉄以外に製鉄で必要なのが大量の炭です。 つまり、製鉄をするには禿山になるくらい木を伐ります。 中国地方は良質の砂鉄も山中で採れたこともあり、山から山を禿山にしながら移動してたたら製鉄を行いました。 その結果二次林として赤松林が成立しました。 竈の燃料として松葉や枯れ枝が利用された時代は、松の根本が整理され松茸が生え、松も保全されました。 現在は松林に人が入らず荒れ、松の元気が失われ松茸も採れなくなり、そこに松枯れ虫が襲いひとたまりもなく真っ赤に枯れてしまいました。
 現在、たたら製鉄は全く行われなくなりましたが、唯一年に1回だけ出雲地方の「日刀保(日本刀保存の略)たたら」で実施されます。 土でできた風呂状の窯に炭と砂鉄と交互に入れ三日三晩焼きます。 火に空気に吹き込むためにふいごを足で踏む作業が伴います。 「たたらを踏む」という言葉の所以です(「もののけ姫」に出てきますね)。 そして、「けら」と呼ばれる鋼の塊ができあがります。 日保刀では2.5トンのけらができ、それを良質な鋼の「玉鋼(たまはがね)」と低質の「ずく」に分けられ、刀鍛冶に配布されます。 残念ながら日本刀以外の刃物に玉鋼が回ることはまずありません。 玉鋼は炭とともに焼いて作られるので多量の炭素が含まれた硬く脆い鉄で、刀鍛冶によって熱して叩かれ引き伸ばされて折り曲げられます。 その工程を何度も繰り返し、炭素や硫黄などの不純物を飛ばしながら形を整えられていきます(現在の鍛造とは異なります)。 これで、硬いけれど粘っこい(脆くない)刀になります。
 日本刀ほどではありませんが、森や林で使う刃物も似たような手間をかけて作られます。 世の常ですが、手の入ったものは手入れをしてあげないと十分に力を発揮することができないものです。 森や林を豊かにするために、刃物の手入れ術をしっかり身につけ、使い終わったらすぐに手入れをすることを習慣づけたいものです。

せきねかずひこ 



退屈な数字から見えてくるもの
(2014年6月会報「ゴロスケ報々」より)

 ゴロスケ報々第155号(前号4月号)の総会報告のページに数字が並んでいます。 たまたま手元ですぐに取り出せる旧いデータで2005年度の総会資料があったので少し比べてみましょう。
       行事(ネットワーク、会議等含む)  PJ活動(事務局事務除く)
 2005年度  26項目・77回・748人     13項目・248回・1,379人
 2013年度  32項目・206回・2,928人   38項目・430回・2,591人

 いかがですか? 8年間で、ほぼ倍増です。数字の拾い方に差があるにしても、いかに充実してきているか、よくわかると思います。 子どもの成長と同じで、毎日一緒にいると気がつきにくいのですが、たまにしか会わないと急に大きくなっていてビックリ、みたいな感じでしょうか。 この数字、そう簡単には真似できませんよ。日々の積み重ね、一人ひとりの頑張りが、こんなところにも表われているんだと思います。すごいですね。  ちなみに、自分が知っているいろんな団体と比べてみると、こんな感じです。

                   (表記ない場合は2013年度。人数は延べ参加・活動人数)
 友の会(事務局事務含む総計)      74項目・678回・会員3,656人・一般1,958人
 しらかしのいえボラ協             52項目・606回・ボラ2,388人・一般1,957人
 光丘中学校PTA(2012年度)        85項目・343回・2,330人(846世帯)
 文ヶ岡小学校PTA(2011年度)       79項目・326回・2,535人(266世帯)
 自治会(数年前の概数)            47項目・227回・1,065人(749世帯)
 桜森コミセン管理運営委員会       47項目・87回・2,048人(行事参加者含む)
 中学校区家庭・地域教育活性化会議  16項目・36回・中学生ボラ100人・383人
                                       (構成38団体64名)

 友の会はやっぱりスゴイですね。大和市自然観察センター・しらかしのいえ(YNC)ボランティア協議会(通称ボラ協:2013年度101名、今期更新時点86名)に対しては一般参加者数が僅差!となっているものの、全ての数値で上回っています。 友の会の会員数は2013年度140名(今期更新時点120名、内PJ等所属が100名)、ピーク時の1993年は439名(94、96、97年度は400人超)でしたので、現在は保全活動会員中心の非常に密度の高い筋肉質な活動状況と言えそうです。 (あ、この中で会長の活動回数が一番少ない=高度に役割分担が進化しているのも友の会の特徴です。 自治会長は200回、小学校PTA会長は120回、中学校PTA会長は80回、ですからね。長年の積み重ねが大切です。)
 不思議なことに、なんとなく「停滞してるんじゃない?」とか言ってしまいがちですが、数字を見る限りではけっしてそんなことはなく、ますます活発な会なのです。 皆さん、自信をもって、無理せず、楽しく活動しましょうね。 それから、大和に負けないよう、行事にはどんどん参加して、活動したら必ず定例会メモに載せて数字を総会資料に反映させましょうね。  

やまひょん でした



飲み水の話
(2014年4月会報「ゴロスケ報々」より)

 前回2012 年12 月に「飲用に適した水とはどういうものかについてお話しする機会は 別に譲る」と書いてしまいました。その時は別の機会がまた巡ってくるとは本当に思って おりませんでしたし、万が一巡ってきたとしても何年も先できっと皆さん忘れておられる だろうと考えていました。ところが、何の拍子か機会が巡ってきました。1 年半、皆さん お忘れと考えるには微妙な期間ですが、かといって内容的に皆さん期待しているとも考え にくい、さてどうしたものかと思案の末、時間もないのでこのお題で書くこととしました。
 皆さん実際にはあまり考えたことはないかもしれませんが、目の前にある水が飲めるか どうか判断する場合、色や濁りがないことを目で確認し、臭いに異常がないか、そして口 に含んだ時味がおかしくないかを確かめると思います。言い換えれば、無色透明、無味無 臭であることを確かめると思います。仮に水道水が色のついた水(例えそれが綺麗なピン ク色であったとしても)、臭いのする水(例えそれが心地よい花の香りであったとしても)、 味がする水(例えそれがほんのり甘い味であったとしても)だった場合、きっと皆さんは 水道局に電話するはずです。そして必ずそれはクレームのはずです。そう、無色透明、無 味無臭、これは飲料水として絶対条件です。
 ところで、皆さんの家庭に送られている水道水の原料(水道では原水と言います)は、 十中八九河川か湖沼の水です。水道は、浄水場で原水の色と濁りをとり、消毒という処理 して皆さんのご家庭まで飲料水として届けます。もし未消毒の水を飲んだ場合、お腹をこ わす方が多数いらっしゃると思います。これは例え無色透明、無味無臭の水であったとし ても、原水には人に病気を引き起こす細菌やウイルス(病原菌と言った方が一般的でしょ うか?)が存在しているからです。そのため水道では消毒という工程が不可欠です。水道 ではこの消毒に塩素を使っています。この塩素、諸刃の剣で消毒には絶大な効果を発揮す るのですが、いわゆるカルキ臭や詳しい方は耳にした事があると思いますがトリハロメタ ン等の原因です。つまり、カルキ臭やトリハロメタン等が引き起こすリスクよりも、感染 症の広範な拡大を阻止する公衆衛生学的な効果を優先しているのが実情です。
 カルキ臭やトリハロメタン等の生成のもう一つの原因として河川、湖沼の汚濁がありま す。河川、湖沼への汚濁による負荷を減らすことは、ひいてはトリハロメタン等の生成を 抑えることになります。河川、湖沼への汚濁による負荷の大きな要因は、皆さんの生活排 水です。「生活排水を見直して川をきれいにしよう!」しばしば耳にするフレーズですが、 実は回り回って皆さんの健康にも繋がっている・・・、まあ、そんなことを言いたかった のですが、ちょっと具体性に欠けましたかね。反省しています。

By Minoru Aoki



本物のイルミネーションを楽しもう
(2014年2月会報「ゴロスケ報々」より)

 すっかり冬の風物詩として定着した感のあるイルミネーション。この冬も各地で行われているようですが、中には、暗くて静かな場所をわざわざ明るくして、「なんでこんな場所で」と思うようなところで行われるものもあります。きっと、頭の上にある本物のイルミネーションが見えていないのではないかと思えてしまいます。
 今の時期、夜、外に出てみると、凛とした空気の中で冬の星々が輝きを放っています。全天で21ある一等星のうち7つが冬の星座にあり、それぞれの色で輝いています。
 その色は・・・ベテルギウス(オリオン座)赤、アルデバラン(おうし座)オレンジ、ポルックス(ふたご座)オレンジ、カペラ(ぎょしゃ座)黄、プロキオン(こいぬ座)うす黄、シリウス(おおいぬ座)白、リゲル(オリオン座)青白と多彩です。
 これらの星は肉眼でも十分に楽しめますし、バードウォッチングに使っている双眼鏡やフィールドスコープで見れば、なおその色と輝きを楽しむことができます。
 星の色は、その表面温度によって決まってきます。表面温度が低いと赤く、だんだん高くなるにつれてオレンジ、黄、白、青白となります。
 私たちの頭の上でさまざまな色の光の競演を見せてくれる星たちですが、その光は長い時間と距離を経て私たちに届きます。冬の大三角形のひとつ、オリオン座のベテルギウスは約640光年、つまり光の速さで640年かかるところから届いています。日本史で言えば鎌倉幕府が倒れた頃の光が今ようやく届いているということでしょうか。
 星の色がなぜ違うのか、今見ている光はどのくらいの時間を超えて届いているのか・・・。こんなことに思いを馳せながら、今度の週末、本物のイルミネーションを楽しんでみませんか?
 なにしろ、イルミネーションは、森の中で見た煌めく星を、木の枝に多くのロウソクを飾って再現したことが起源だそうですから。

あき



冬の森を歩こう
(2013年12月会報「ゴロスケ報々」より)

12月も中旬になってくると色づいていた木々の葉が落ち、森の中も見晴らしが良くなってきた頃でしょう。
そんな見晴らしの良くなった森を歩いていると、葉が茂っていたときには気が付かなかった森が見えます。
斜面で何かをついばむ鳥がはっきり見えたり、大きな木に隠れていた低木の緑の葉。
そしてこの季節気が付くのは鳥の巣。
お皿状、お椀状、真ん丸のボール状、いろんな形の鳥の巣が、ススキの中にあったり木々の枝に支えられてます。
毎年同じ道を歩いていると、「おっ!あれは新しい巣だね」、「あれはまだ落ちずにあるんだね」と目を楽しませてくれます。
樹を見てるとこんどは樹皮に何かいることに気が付くでしょう。
ジョロウグモの白い卵塊があったり、梅の木には卵のようなイラガの丸い繭があったり、樹皮の隙間に越冬している昆虫がいたり、枝の先の落ちない葉、よーく見ると折れた葉の中に幼虫が隠れてたります。
そんなふうにじっくりと樹を見ていると、枝先には冬芽が次の春に向けて大きくなりはじめていることでしょう。
冬芽を触ってみると、感触がたのしいですね。スベスベ、カチカチ、ベトベト、フワフワ、カサカサ?
樹皮はどうですか、同じ感触ですか?同じ樹皮を夏に触るとどうでしょう。
春へ向けての準備といえば道端にあるロゼットですね。
タンポポ、ナズナ、オオバコ、ハルジオン、ヒメジョオン、ロゼットを見て花を思い浮かべることができますか?
この道端に花が咲くのを想像するのも楽しいですね。 いままで見つけることのできなかった鳥の巣をみつけることができるでしょうか? ジョロウグモの卵塊までつづく蜘蛛の糸をみつけられますか? タンポポ以外のロゼットをみつけられますか? 今年はヘイケの湿地に氷が張るのはいつになるでしょうか? 霜柱のザクザクした感触は楽しめるのはいつになるでしょう。 これからの寒い季節でないと楽しめない森、寒い時期にはその時でないと楽しめない森があります。 望年会の後にでものんびりと歩いてみてはどうでしょうか。


篠原



森からの恵み
(2013年10月会報「ゴロスケ報々」より)

雑木林ファンクラブでは「いきもののにぎわいのある森」作りの為、横浜自然観察の森で 主に下草刈り、間伐、炭焼きの活動をしております。 その結果として、下草刈りをすると色々な草花が芽を出し、来園者の目を楽しませており ますが、下草刈りを怠ると芽生えていた草花が減少していきます。最近の具体例としては1 年間草刈りをしていなかったクヌギ林では、数多く咲いていた「野カンゾウ」が減少してお ります。今年はクヌギ林全体の草刈りを実施し多くの草花から恵みをもらいたい。 間伐材を利用しての恵みは多くあります。 炭小屋エリアにある建物・造作物のほとんどは森での間伐材を利用したものです。 数は減ってしまいましたが来園者に優しい「木のベンチ」も間伐材の利用です。 また、会員によるクラフト作りも楽しい活動です。 犬・トナカイ・リス・フクロウの置物、プランター、色々な形をした鉢置き、巣箱、カ ッティングボード、靴べら、孫の手、竹を利用した竹馬・ポックリ・水鉄砲・竹トンボ・バ ランストンボ・一輪挿し・竹の器、鉛筆立て、鍋敷き、サイコロ、まな板、コースター、ア ルプホルン、一輪車等数多く作っています。 直近の作品ではケヤキの皮で作ったランプシェードがあり、味わいのあるものです。 炭焼きは、観察の森には存在しなかった外来種や園芸種を除伐して炭材とし、8月を除き 毎月実施する予定です。炭焼きにはドラム缶窯では7時間、本窯は30時間以上の燃焼時間 が必要となります。その結果、木炭、竹炭が出来上がり、煙突の煙からは木酢液、竹酢液の これからも多くの恵みを頂くためにも工夫した活動を実施していきたいと思っています。


雑木林ファンクラブ 大越



陸を渡るオオミズナギドリ
(2013年8月会報「ゴロスケ報々」より)

 秋晴れの2012年11月14日に、仲間二人と共にこの森の上空を通過するオオミズナギドリを観察できました。 これはこの森での初記録との事です。オオミズナギドリはミズナギドリ目の大型海鳥で、夏鳥として飛来し、北海道から八重山諸島までの日本列島周囲の離島で 繁殖し、 冬になるとフィリピンやオーストラリア北部周辺海域へ移動します。大型海鳥の例に漏れず長命で、標識放鳥された個体の回収により、36年8ヶ月 との記録1)があります。 (体重は500g前後ですので、同体重の哺乳類と比較して、とてつもなく長命です。)
 発見時は低空を羽ばたいており、白く輝く翼、独特のフォルムですぐにミズナギドリ目 の海鳥と気づきましたが、種名は自宅パソコンの画面で確認できました。 昨年5月に滞在していた小笠原諸島で良く観察できた鳥ですので、その時は思わず懐かしさで長時間画面に見入ってしまいました。
 さて、いつもは沖合を悠然と滑空するオオミズナギドリが、何故横浜上空を“羽ばたきながら”飛んでいたのでしょうか?
 すぐに思いつくのが、悪天候に よる迷行です。悪天候で400羽のオオミズナギドリが落下した先例もあります。(黒田2)
 しかし、発見当日から一週間遡った期間の関東、甲信越の気候記録を調べても、 穏やかな天候であり、悪天候と言える状況は無かった事が分かりました。 これはどうした事でしょう。更に文献調査を進めると、栃木県などの内陸部で多くのオオミズナギドリが落下保護されている事が判明しました。 (久武3)) これによりますと、昭和51年度から平成14年度までの27年間に、内陸県である栃木県で計40羽のオオミズナギドリが保護され、 やはり内陸県の群馬県でも 昭和51年度からの21年間に計55羽が保護されています。久武氏の研究によりますと、これらの記録の内、台風などの影響が考えられるものはごく少数で、 殆どは11月上旬から中旬に吹き始める北西からの季節風に乗って、積極的に南洋へ渡ろうとしていた個体ではないか、との事です。日本海側にもオオミズナギ ドリの繁殖地は新潟県粟島などいくつも有り、巣立ちの時期はちょうど11月上旬〜中旬です。どうやら日本海側から群馬、栃木を経由する渡りのルートがある らしい、と久武氏は推論しています。
 日本海から群馬、 栃木を経由して太平洋へ抜けるルート?では太平洋への出口はどこでしょうか?私は密かに出口は横浜を含む神奈川県にあるのではないか、 と考えています。 毎年見掛けても白いから “カモメ類”と括られていた鳥の中にオオミズナギドリが混じっていたのなら、ロマンを感じませんか? 11月のこの森の空で白い大型鳥が一生懸命羽ばたいていたら、 皆さん「頑張れ!落下するなよ!」とエールを送ってあげて下さい。

1)(公財)山階鳥類研究所 2011年鳥類標識調査報告書 鳥類標識検討会
2)黒田長久 「オオミズナギドリの関東への大量迷行について」 山階鳥研報   1966 第4巻 第5号 p388〜396
3)久武俊也 「栃木県における傷病鳥としての海鳥保護記録」 野生鳥獣研究紀要   No.29(2003) p95〜102


KFC 大浦晴壽



煙り好きは変人??

(2013年6月会報「ゴロスケ報々」より)

 気温が上昇して来たこの時期、“火”や“煙り”の話しなど無粋である事は承知なのだが、、、。 皆さんもご承知の通り、当「自然観察の森」の園内は原則火気厳禁である。 入口横の立て 看板にもその旨が注記されている。 来園者/利用者の“火”の不始末による不測の火災を予 防するためには当然の注意書きと言える。
 それにも拘わらず時折、炭小屋の一角から煙が園路にたなびき出ているのを見かけます。そ れはここを作業拠点としている私達ZFC の活動日だからである。 発煙元はどこかと探すと、 大半は不要材を燃やしている半割のドラム缶であり、時には炭焼きの「口焚き」であったり炭 窯の煙突からの煙りである。 炭焼きの煙りは、窯の温度上昇、炭化の進み具合でその色、 匂いが微妙に変化して行き、時にはいがらっぽく眼に沁みるなど変化に富み中々興味深い。
 また、これらの火気使用は単に園内ルールを無視している訳では無く、センターの了解のも と地元の消防署に火煙届を提出し、正式に許可を得ているので誤解をしないで頂きたい。
 園路にたなびく煙りを嗅ぎ付け、「園内は火気厳禁ではないのか!!」と強面で、或いは「懐 かしい匂い!!」と言って炭小屋に立ち寄る方もある。前者の方には一応お詫びをした上で、 火気使用の理由を丁寧に説明しご理解を頂くよう努めている。 また後者の場合大方、焚火 や煙りへの抵抗が少い方で煙り好きの私は我が意を得て、煙りに関わるエピソードや効用に ついて話し、煙への良き理解者との遭遇を喜び、一日幸せな気分に成れるものだ。
 そもそも、日常生活の中で「煙り」が毛嫌いされるように成ったのは何時の頃からだろう?? かっては、身近な所で「落ち葉焚き」をしたり、裏庭に七輪を出して魚を焼いたりし、そこか ら煙りが出るのはごく当たり前の事であった。 それが悪者扱いに成ったのは都市化に伴う 近隣住民との距離が縮まっただけでなく、ある時期「煙り」には有毒なダイオキシンが含ま れる!!」との報道が成されたからであろう。 しかし、全ての煙りにダイオキシンが含ま れているわけではなく、化学物質で処理された不要材等を焼却した場合に限り、ダイオキシ ンが発生することを理解して頂きたい。
 今でも地方に旅行した折など郊外の畑で脱穀後の稲わらや、豆類の残滓を山積みにし燃やし ているのを見かける事がある。 そこから立ち上る煙りが揺ったりとたなびくのを見たり、 或いはかすかに匂ってくる煙りを嗅ぐと、 何とも落ち着いた幸せな気分に成るのは私だけ だろうか???

ZFC 片岡 章



このごろのトビ

(2013年4月会報「ゴロスケ報々」より)

  平日で昼食の時間もかなり過ぎていたので、自然観察センター前には他に人がおらず、お昼を 食べていたのは私1人でした。うっかりうつむいていて、サンドイッチを口から離した時、両手 の親指にすごい衝撃と重さと堅さを感じました。目の前には2本の茶色い太い脚。トビでした。 サンドイッチを両手で持っていたので、たぶん、トビをレシーブしたのだと思います。 レンジャーに知らせに行くと、古南レンジャーもやられたとのこと。「だって以前はこんなこと なかったじゃない」。そう、古南レンジャーが以前赴任していた頃は、トビはお弁当を盗りに来 たりはしなかったんです。人とは一線を引いていて、お互いに干渉しないように暮らしていました。  そんな関係を壊してしまったのは、私たち人間です。 10年以上前、トビやカラスが低く飛んでいる時に見にいくと、 モンキチョウの広場に口を開けたカバンが置いてあり、中に、細かくしたパンがたくさん入ってい ることが何度かありました。もっと以前から、鎌倉や横須賀の海では、トビに餌を投げ与えて、 飛びながらキャッチさせていたようです。トビは、そんな社会の変化に合わせて人を恐れなくなり、 人との距離を近づけてきたのでしょう。食べ物を盗りに飛んで来た時、ひっかかれて怪我をすること もありますが、トビは動物の死体や腐肉も食べるので、爪はとても不衛生です。大きいけれど攻撃的 ではなかったトビのことを、今は、「お弁当を食べるときに注意する生き物」と子供達に伝えなけれ ばいけないなんて、良い世の中ではありません。トビは、急降下でお弁当を盗りに来るよりも、のん びりくるりと輪を描いているのが似合っている生き物です。  ・・空を見るとトビは2羽に増えていて、頭上のかなり低い位置で輪を描いて、まだ狙っています。 脚には何もつかんでいなくて、サンドイッチは数m先に落ちていました。トビと人間の平穏な関係の ためには、「人から餌を得られる」ことを学習しない方が良いので、落ちたサンドイッチもあげない ことにして、トビより先に拾いました。お互いが安心して暮らせるように、人とトビの適当な距離が 保たれていた、平穏な日々がまた来ますように。

ふじた・かおる



てのひらおんどけい

(2013年2月会報「ゴロスケ報々」より)

 私が観察の森に来たのは20年以上前、失われていく横浜の緑を守りたい、という気持ちからでした。意欲だけでは何もできない、守るためには知識が必要、技術が必要、仲間が必要であることを学びました。当時の観察の森の行事は、環境保全ボランティアを育成するための様々なプログラムを用意していました。そして提言にはデータの裏付けが必要であることも学びました。横浜市民には環境保全の意識が浸透してきているように思えますが、自宅の周りでは今でも小さな緑地が消滅していますよ。

 今私は観察の森や瀬上の森で定期的に植物調査をしています。調査をしていると、ここで何かしないとなくなっちゃうよね、という部分が見えてきて、保護作業をする。増えるものもあるし保護してもなくなってしまうものもあるのね。植物の調査をする前は鳥のルートセンサス調査をしていました。耳が聞こえなくなってきたので鳥の調査は辞めました。鳥でも植物でも私より詳しい人はたくさんいるのに、見るのは楽しいけど調査は嫌って言う人結構多いよね。

 浜口さんの本「生きもの地図が語る街の自然」を読んでみてください。定期的に生きものを数えて地図に落として行くと、そこから環境の変化が見えてくるの。はじめて浜口さんの探鳥会に参加した時、カラスは何年生きるのですか?という質問に、野生の状態では調べられていません、飼育された個体が××年生きた記録があります、という風に答えるのを聞いて、ああデータの裏付けのある話には説得力があるなと感じました。あんなことこんなこと最終的に浜口さんに相談すればなんとかなる、と安心して活動していたので、2010年5月に浜口さんが亡くなった時は突っかい棒をはずされたみたい。ぼんやりうろうろしていましたよ。そんな時本屋さんの児童書のコーナーから懐かしい暖かいものが感じられたの。福音館の幼児絵本の背中に浜口哲一と書いてあったの。浜口さんがぶんを書いて、杉田比呂美さんがえを書いている「てのひらおんどけい」という絵本でした。ちっちゃい子がいろんな所を触って、こっちはつめたい、こっちはあったかいと感じる本なの。目で耳で受け入れていた世界を手のひらで受け止めるんだね。それから鼻でも舌でも。世界はいろんなもので満ち溢れているんだということを忘れないようにしようね。  

篠原由紀子


ピクニック広場の下には・・・

(2012年12月会報「ゴロスケ報々」より)

何でもいいから書いてくれと言われてちょっと困っています。お題をいただいた方が私としては書き やすいのですが・・・「バードウォッチングが趣味です。」と公言している以上、鳥の事を書くのが順当かもしれません。しかし、「はばたき」(野鳥の会神奈川支部の 支部報)によく書いているので、ちょっと芸がなさすぎかなぁ??と言って、友の会で担当している会計のことと言っても書くことが思いつきません。 そこで、皆さんあまり興味なくて面白くないかもしれませんが、私がしている仕事に関係ある話でもして、お茶を濁すことにします。ご存じない方とも多いかと思いますが、 ZFCの炭焼き小屋の前の道路を挟んで反対側のピクニック広場の下には大きな池(貯水槽と言った方がイメージに合いますか?しかし、水を溜めて滞留しているわけ ではありません。常時入れ替わっています。私どもでは調整池と呼んでいます。)があります。この池の容量は30,000m3(25mプールで55個分といえばイメージがしやすい でしょうか?)で、中身は水道水です。この水道水は、綾瀬市にある浄水場で作っており、 その元になる水は、相模川から取水した河川水です。水道水は、浄水場から観察の森までは約23kmの旅をし、観察の森から金沢区や港南区等のご家庭に配られ、 さらに横須賀方面へ送られます。現在、保全管理計画の話が進んでいますが、ピクニック広場は草地です。森や湿地になることはないと 思います。地下にはコンクリート構造物があり、上を覆う土壌は1mもないのでそんなに大きな木は育たないでしょうし、また上に水がたまることはありません。 もし、森になってしまうと根がコンクリートを侵食し、池の機能が 失われてしまうのも心配ですし、雨漏りでもしたら大変です。何と言っても多くの方の飲用する水が入っているわけですからね。雨漏りするとどうして飲用に影響するか ついては、飲用に適した水とはどういうものかについて話をする必要があるので、別の機会に譲ります。と言っても別の機会の予定はありません。 最後にお願いですが、あんまりピクニック広場の下が水道施設だと公言しないで下さいね。 秘密なわけではありませんが、いろいろ物騒な世の中にあって、安全、安心の面からどちらかというと人には知られたくない情報なものですから。

By Minoru Aoki



炭とロケット

(2012年10月会報「ゴロスケ報々」より)

2010年6月、7年と60億キロの長旅を終えた小惑星探査機「はやぶさ」の帰還に私たちは 感動しました。このはやぶさを打ち上げたのが、M−V(ミューファイブ)ロケット。このロケット、実は多くの部分がプラスチック製、つまりCFRP (炭素繊維強化プラスチック)製です。繊維がC(炭素)なので、CFRPです。M−V後継のイプシロンロケット(13年初フライト)は、全段(3段式ロケット) CFRP製で、プラスチックがメイン素材となります。これは主にコスト面で有利なのですが、工期の短縮や性能向上面でも見逃せません。
近年、CFRPはロケットだけでなく旅客機や自動車(レーシングカーは30年近く前から)・自転車・ゴルフシャフト等にも採用されています。 通常は織ったクロスを樹脂で硬化させ成型しますが、ロケットは少し違います。フィラメントワインディング製法と呼び、筒状の分解可能な金型(かながた)の表面に、 樹脂を含浸させた炭素繊維そのもの(糸)をグルグルと巻きつけていきます。それを炉に入れ樹脂を加熱硬化させ、金型を取り外すと中空のCFRP製ロケット部品 が出来上がります。後は燃料を詰めて部品を取り付けロケットモーターとして完成です。
炭素繊維はその名の通り、炭素つまり“C(カーボン)”で出来た繊維(ファイバー)です。これはアクリル繊維などを蒸し焼きにして作ります。ですから 炭素繊維(カーボンファイバー)は炭素が繊維状に繋がっています。因みに、この繋がり方を変えたものの一つが、宇宙エレベーターを実現させると考えられている カーボンナノチューブです。
勘のよい方はもうお気づきでしょうが、炭素繊維の作り方は炭を作るのとよく似ています。炭は木材や竹材を窯の中に入れて、窯内の酸素濃度をコントロール して、セルロースを蒸し焼きで炭化させます。樹種によってセルロースの構造等が異なり、炭に向き不向きがあります。どの程度炭化させるかも焼き方によって異なり ます(白炭・黒炭)。炭素繊維も元の糸によって強度や性質が違います。本当によく似ています。
間伐材を昔からのやり方で焼いている炭ですが、実はこの応用が現代の科学や我々の生活を支えているのです。炭作りに情熱を燃やすことは本当に価値がある ことを肝に銘じておきたいものです。
−この文章には技術科学的見地で、誤りや誤解がある可能性を承知ください−

ロケット屋だった ZFC 関根和彦


                  森の広さを実感?できるおはなし
          (2012年8月会報「ゴロスケ報々」より)

 横浜自然観察の森の広さは約45ha、というのは時々聞きますが、これはいったいどれくらいの大きさなのでしょう。1haは100メートル×100メートルなので、かけっこで100メートル走の線がまっすぐとれるような小学校の校庭くらい、ということになります。ちなみに全国の小学校の平均は敷地で1.6ha、運動場で0.8haくらい、ということで、45haは小学校28校分、運動場56個分くらいの広さです。30坪(99平方メートル)の敷地の家が道もなくびっしり並ぶと4,545戸分(4人家族なら1万8千人分)、75平方メートルの3LDKのマンション(専有部分のみ)なら6,000室分(4人家族なら2万4千人分)なので、森に動物は何頭いるのか知りませんが、人間よりはゆったり暮らしているのかな、なんて、急にうらやましくなってしまいます。こういう話の時によく出てくる東京ドーム(行ったことないので実はよくわからない尺度)は約4.7haということで10個弱(5万人のコンサートなら50万人分)、横浜スタジアムは約2.6haということで17個、関係ありませんが地図で目についたので江ノ島は38ha(勝った!?)、城ケ島は99ha(さすがは県内最大の自然島)、みなとみらい21地区は186ha(円海山緑地全部が束になれば200haなので勝てる!?)というふうな具合です。木々に囲まれ、起伏が大きい森の中を歩いていても実感がわきませんが(本当は数字ではなくてこっちが正しい「実感」のはずなのですが)、実はかなり広いんですね。静かな森の中で、ところどころにある広場や、ちょっとひらけた空間を独り占めする瞬間、これは相当に贅沢なことなのかもしれません。じっくりあじわっておきましょう。                               
                             (やまひょん)
                                


                           金 環 日 食
          (2012年6月会報「ゴロスケ報々」より)

 ゴロ報の原稿依頼を受けたのがちょうど金環日食(5月21日)の朝でした。迷わず私の観察記録を書くことにしました。朝6時ごろから待機していましたが、あいにくの曇り空、ときどき薄い雲の向こうに三日月型の太陽を見て、まずは見えた見えたと喜ぶ。がまた厚い雲が邪魔をする、時間が気にかかり時は流れる。7時30分ごろ薄い雲となるが日食グラスでは何も見えない。肉眼ではどうかとメガネを外せばまるい輪の太陽が見えたではないか。まずは一安心、約束の金環日食は見ることが出来ました。  
 
 目を窓の下に転ずると登校中の小学生の列がワイワイガヤガヤ、どうしてこんな機会に見ないの?「もったいない」  

 思えば私は3年前の2009年7月22日皆既日食を見るためにトカラ列島の口の島にいました。当日は朝から大雨が降り皆既日食は見られませんでした。しかし周りは夕方のように暗くなり気温もわずかに下がったように感じました。そんな思いがあったので今回は薄い雲のベールの向こうにわずかに金環を見た時は感激のひと時でした。                               
                             ZFC  江崎 章
                                


                           季節の森を歩こう
          (2012年4月会報「ゴロスケ報々」より)

 毎月第一日曜日に行なっているガイドウォーク「季節の森を歩こう」では、いつも二つのカテゴリーの生きものを素材にしてプログラムを組み立てています。

 一つはそれぞれの季節を特徴づける生きもの、例えばオタマジャクシを手の平に乗せて水温む季節感や小さな生命の躍動を感じてもらうのは人気メニューの一つです。もう一つは、同じ生きものを毎月観察してその変化を見ていくことです。これは年に何度も参加されている常連の方々に好評で、その代表がミズキとオニシバリという2種の植物です。  

 ミズキは、早春、森の全景がミズキの枝先や冬芽の色で赤っぽく見える季節から、若葉、雲を浮かべたような白い花、深い緑、赤と黄色が混じる紅葉、そして落葉後のうすい灰色まで、私たちのガイドでは「森の色を決める樹」と紹介しています。特に寒さと乾燥から成長点を守っていた冬芽がコート(芽鱗)を脱ぎ始めると、中から今年の枝先を構成する何枚もの若葉とブロッコリーのような蕾のかたまりが見えます。小さな冬芽にぎっしり詰まっていた生命の爆発は、多くの方が感動される観察素材です。そして、枝先に残る芽鱗が落ちた痕(芽鱗痕)は、その枝の成長過程を目で確認できる背比べの柱の傷のようでもあります。八百屋のブロッコリーってこの樹からとれるんですよ、とか、この傷は樹の成長を記録するためにレンジャーが毎年ナイフで印をつけているんですよ、と話すと、一瞬の怪訝そうな沈黙の後、どっと笑い声が広がります。  

 オニシバリは別名ナツボウズ。観察の森ではトレイル沿いの大きな落葉樹の下によく見られる低木です。ジンチョウゲの仲間で花期は早春。薄い緑の花はあまり目立ちませんし、4月にはもう花を散らして大急ぎで夏までに赤いきれいな実をつけて、太陽の光が地面に届かない真夏は落葉して枯れ木のようになってしまいます。そして大きな樹が落葉して光が地面に戻ってくると若葉を広げて冬の間にせっせと光合成。夏冬逆転して生きる知恵ですね。常連の参加者は、今月はどうなっているかな、と楽しみにされますし、冬に初めて参加される方は、寒い時期に葉をつけているのに落葉樹と聞いて驚かれます。一般の落葉樹のことを「夏緑樹」とも言いますが「冬緑樹」って言葉はないのかなと思ったら、、、ちゃんとあるんですね。  

 その季節ならではのものと季節ごとの変化を感じるもの。どちらも自然観察の大きな楽しみです。
                                ( Charlie )


                           手作り絵本
          (2012年2月会報「ゴロスケ報々」より)

 自然観察の森・センター内に鳥やたぬきや植物の写真等の展示とともに手作りの絵本を展示しているコーナーがあるのを見たことがありますか?  

 ここに展示している手作りの絵本は観察の森のなかを観察して歩き、その時の生き物や植物などの自然との出会いと触れ合いや感動を題材にしています。ストーリーや絵コンテなど、みんなで考え組み立てていきます。本文は各自担当しそれぞれの個性的なタッチや色使いを楽しみながらも一冊の絵本を作っています。ひとりでは気づかないことできないことでも力を合わせることによってひとつの絵本ができることに感動します。  

 そして生まれた手作りの絵本を展示して森に来てくださった方々(子供から大人まで)に手にとって見てもらうことにより、自然の大切さに気づいてもらい、興味を持ってもらえればいいなーと考えています。  

 わたしたちの活動は生き物調査や草刈などのような森の環境保全に直接係わりませんが、森で作った絵本が森や自然への道案内のひとつの形になっていると考えています。  

 春には新しい絵本“森からのおねがい”が登場します。ゴロスケのページもあります。ぜひ、手にとって読んでください。 そして、絵本の中の生き物たちや植物などに会いに森のなかに出掛けてみてはいかがでしょうか。

                       森の絵本づくりの会・しかま



                        森に響く笑い声
          (2011年12月会報「ゴロスケ報々」より)

 ホッホッホッホッホッホッホッホッ
 
 夜、森の中を歩いていると、だんだんと大きくなる笑い声のような声を聞くことがあります。初めてこの声を聞く人や、声の主を知らない人は「いったい何の声だろう!?」と思うのではないでしょうか。
 実はこれ、フクロウの声なんです。
 フクロウというと、「ホーホー、ゴロスケホーホー」という鳴き声が有名ですね。「奉公、ボロ着て奉公」という聞きなしを覚えている方も多いと思いますが、フクロウはこの他にもいろいろな声で鳴くことが知られています。
 手元にある資料などで探してみると、16種類の声を通訳できるという記述や、オスとメスのエサの受け渡しにかかわる鳴き声を28種類記録して記載しているものもあります。
 実際、夜の調査で、「ホーホー、ゴロスケホーホー」と鳴く声に対して、「ウギャー、ウギャー・・・」と別のフクロウが鳴く声を聞くこともあります。
 夜の森では目が利かない分、耳が敏感になりいろいろな音や声を聞くことが出来ます。  
 でも、フクロウの鳴き声が「ホーホー、ゴロスケホーホー」だけだと思っていると、せっかくのフクロウとの出会いを逃してしまうことにもなりかねませんね。
 みなさんもフクロウのいろいろな鳴き声を覚えて、夜の森に出てみませんか。

                          PJ-STRIX 秋元文雄                                

                        友の会の畑
          (2011年10月会報「ゴロスケ報々」より)

 友の会の畑を見た方は雑草が茂っていてびっくりされるかもしれません。しかし、それには訳があります。  

 自然観察の森・友の会の畑は、生き物のにぎわう畑を目指していますので、環境や生き物にやさしいことが一番大切だと思っています。畑を作ることにより、周囲へ悪い影響を与えてはいけません。ですから、畑には森の外から農薬や化学肥料はもちろん、プラスティックスの様な分解しにくい資材だけでなく堆肥や有機肥料なども持ち込まないでいます。  ところが、そのようにやってみるとなかなか作物が育ちません。育つ途中で枯れるものが多いのです。一番の原因は土の養分不足のようです。

 ところが少し横を見ると、林の木は何も肥料をやらないのに元気に育っています。きっと林は、木や草、それらを住みかとする菌や微生物、それにミミズのような小動物やもっといろいろな生き物がいて、お互いに協力しながら豊かで自然な土を作っているのです。  

 そこで畑でもいろいろな生き物が多くいる森の土に近づくために、@必要以上に雑草は刈らない、Aむやみに土を掘り返さない、B落葉や刈り取った作物と草は畑の中で土に返す、をやってみることにしました。だから、作物の生育を妨げない野草たちは、刈り取ったりしません。また、作物同士が協力できる様に何種類かの作物を一緒に植えたりしています。特に、根粒菌と一緒に作物の栄養の確保に活躍してくれるマメ科の植物は、作物であろうと野草であろうと大切にしています。  

 こんな訳で友の会の畑は、現在雑草だらけでいろいろな作物が雑多に植えられています。クモや昆虫など生き物は以前よりにぎわってきていますので、作物でも実り豊かな畑になってゆくように思います。ボランティアまつりや望年会でたくさん収穫できるように、皆さんも応援してくださいね。                                  (畑PJ 落合)

                    観察の森のトンボ
          (2011年8月会報「ゴロスケ報々」より)

 古来、トンボは「秋津」と呼んでおり、日本自体も「秋津島」または「蜻蛉島」と呼ばれていた。それほどトンボが沢山いたと同時に親しまれていたのだろう。そしていつの間にか飛ぶ穂に似ていることから「飛ぶ穂」がなまって「トンボ」になったという説もある。 日本には約200種類のトンボが生息している。その内38種が絶滅危惧種に指定されている。それでは、横浜自然観察の森園内にはどのくらいの種類が生息しているのだろうか。横浜自然観察の森調査報告2(1996)では33種類が報告されている。 KFC(カワセミファンうラブ)が調査を初めて5年経つが、新たに8種類見つかっている。しかし、1966年当時確認された内5種類は未確認になっており、しかも、昨年の調査では新たに3種類、今年1種類が確認されておらず、2011年7月現在では33→24種となり、調査を始めてから確認された8種類の内6種類も一過性の確認のようで、今年の確認種類数は、これから出現する種類も含め26種程度が期待できるに過ぎない。 日本で見られる200種類の内、成虫が越冬するのはわずかに3種類だが、横浜自然観察の森では3種全て見ることが出来たが来年の保証はなく、チョウと比べると、横浜自然観察の森の環境はトンボにとって大変厳しい状況にあると言える。 オニヤンマやギンヤンマも滅多に見られなくなってきている。年に1頭または数頭しか見られない種類も多く、何時見られなくなってもおかしくない種類は相当数にのぼる。 そこでクイズです。
 オニヤンマは、卵からヤゴになり成虫になるには何年かかるでしょうか。
 選択肢・・・ 1年・2年・3年・5年・7年  

                              KFC 平野
                              

(オニヤンマは卵から成虫になるには5年掛ります。そのため生息環境の水質が5年間変わらないことが、大切な条件となります。)
                    続・倒れた樹はどうなる?
          (2011年6月会報「ゴロスケ報々」より)

 今から3年前、ゴロスケ報々118号(2008年2月)ふむふむでお話した「倒れた樹はどうなる?」の続きです。
 観察センター前の小道を入ると右側に根っこを見せてモンキチョウの広場に向かって倒れた樹(クマノミズキ)があります。2007年9月7日台風7号の大風に遭って倒れてしまったのでした。
 倒れこんだ梢はモンキチョウの広場の邪魔者のようにも見えます。普通の都市公園ならば「危ない・みっともない」と言われて直ちに除去されてしまいそうですが、観察センターは「観察資源として残す」と。
 今年…来年…何年か後に、どんな姿になっていくでしょうか。……というのが前回の「ふむふむ」でした。

 では、あれから4年目のその後の様子はどうでしょう。
「枯れてしまった?」
 いえいえ、元気いっぱいです。
「むっくりと起き上がって真っ直ぐに立った?」
 いえいえ、それは無理だったようです。寝ころんでいます。
「倒れた角度のまま広場の中心に向かって伸びる?」「これからの枝は、そこから上に向かって伸びている?」
 ええ、伸びています。でも下敷きになった枝は枯れてしまい、新しく芽を出すことはありませんでした。
 梢のほうでは上に向かって伸び、さほど広場に突き出してはいないように見えます。
「むらじいなんかの思いもつかない良い格好になっている?」
 ええ、目いっぱい頑張っているなぁという様子に拍手したい程です。
 幹の根元に近いところを見ると、沢山の胴吹き(幹や枝の途中から吹く芽のこと)が出て、すっくと立ち上がっています。でも、頑張りすぎたように一杯枝を出したので隙間もないほどです。
 これって、あと何年かたつと、どんな姿になっているのでしょうか?
 またまた気になって、見続けたいむらじいなのです。

                              (むらじい)
                           梅にウグイス
          (2011年4月会報「ゴロスケ報々」より)

 春まっさかり。森のあちこちからウグイスのさえずりが聞こえてきます。ウグイスがそれまでの「チャッ、チャッ」という地鳴きから「ホーホケキョ」とさえずり始めるのが2月の終わりから3月の初め頃。まさに春を告げる鳥といえるでしょう。 ところで春を告げる花というと梅の花があげられます。梅の枝にとまるウグイスの姿は、花札をはじめ多くの絵にも描かれています。まさに「梅にウグイス」。しかし、しかしですよ。バードウォッチャーに言わせると「梅の木にウグイスは来ない」ということになります。そして、梅の花によく来るのはメジロなのです。メジロは緑色(うぐいす餅の色)をした小さな鳥で、花の蜜を吸いに梅の花によくやってきます。かたやウグイスはやヤブを好み、あまり見やすいところには出てきません。(梅の枝にとまるウグイスを見たらラッキー!)ですから「梅にウグイス」は「梅にメジロ」の間違いだ、と主張する人も多いのです。
 
 でも、ウグイスも梅の花も、間違いなく「春を告げる鳥と花」といえるでしょう。その2つの取り合わせで「梅にウグイス」・・・で納得いただけるでしょうか。   (中里)

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